色素増感太陽電池の概要

 一般に“湿式太陽電池”とか“グレッツェル電池”などと呼ばれる新型の太陽電池は 1991 年にグレッツェル教授らが提案した色素増感型太陽電池を指し、シリコン半導体を使わずにヨウ素溶液を介した電気化学的なセル構造を持つのが特徴です。また、材料が安価であることと作製に大掛かりな設備を必要としないことから低コストの太陽電池として多くの期待を集めています。

 本電池の構造は非常にシンプルで、透明な導電性ガラス板に二酸化チタン粉末を焼き付け色素を吸着させた電極と、同じく導電性ガラス板の対極から構成され、電解質溶液の酸化還元反応を伴うことから“光合成”に例えられたりもします。

 光エネルギー変換効率は論文上ではコンスタントに 10% 近い値がグレッツェルらにより報告されていましたが、しばらくの間追試に成功した人はおらず、研究者間では疑念視されていました。しかしながら最近では 10 % 超の値を国内の学会等でもちらほら見かけるようになってきております。理論最高効率は33 %と言われていますが、これは単一の光吸収材(色素)を用いた場合の話で、複数の色素をうまく組み合わせれば更なる性能向上が見込まれます。長期安定性に関しては液漏れの観点から従来のシリコン太陽電池にはまだ及ばないため、今後の課題となっています。


 お問い合わせは 内田 聡 uchida@rcast.u-tokyo.ac.jpまで、遠慮なく質問意見等お寄せ下さい。
可能な範囲でお答えしております。ちなみに筆者は大学に従事しております。*リンクは自由におはり下さい。

Google