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■太陽光発電(8)NEDO、4年で100億円投資、日本のリード不動に
(2006年4月20日付
日刊工業新聞11面)
【27年間で2000億円】
太陽電池の開発と普及で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)など国が27年間に投じた額は2000億円を超える。最初の20年間は”滑走路“から浮上せず、成果が出てきたのはこの5、6年のことだ。
今や世界をリードする日本の太陽電池だが「結晶シリコンを薄くし、コストダウンを図るには限界がある。ただ当面は結晶の世界が続く」(小井沢和明NEDOエネルギー環境技術本部副本部長)という。そうした中、2020年には業務用コストで1キロワット時14円まで下げられるかが一層の普及への課題である。
この一環としてNEDOは7月にも企業・大学などを対象に09年度までの4年間に100億円を投じた未来技術研究開発テーマを選定する。銅、インジウム、セレンを主原料にするCIS系、薄膜シリコン、色素増感、超薄型シリコン、有機薄膜太陽電池のそれぞれに数値目標を設定して開発を行う。
「太陽電池に関してリスクのある先をにらんだ技術はNEDOが開発する。CISは小さい面積で電気変換効率18%、薄膜シリコンでは1000平方メートルモジュールで15%と結晶シリコン並みの効率をそれぞれ実現する」。NEDOは薄膜シリコンの生産性と効率アップに焦点を置いている。
色素増感は将来、太陽電池の大量普及を実現する際に最も低価格が期待できる。それだけに、まずは小面積で15%の電気変換効率の目標を掲げ、電力用としてどの程度可能なのかを探る。ガラス基板の間に有機色素を含んだ酸化チタンと液体の電解質を挟んだこの太陽電池は、簡単に壁に張り付くような塗料形態となるだけに、太陽電池の最終的な姿でもある。
フジクラと東京理科大学はフジクラのスクリーン印刷技術を応用し、大面積を再現性よく生産する技術を開発。実用セルで1単位の大きさとなる10センチ角で8.4%の電気変換効率を実現した。酸化チタンはナノサイズ(ナノは10億分の1)の材料で表面が影響するだけに、酸化チタンの合成が光の吸収に大きく影響する。
【2020年にらむ】
両者はNEDOの色素増感電池の開発公募に参加。量産技術の強みを生かし、フジクラはまず光電子研究所(千葉県)に量産ラインを整え、「09年度から量産対応を始める」
(北村隆之材料技術研究所化学機能材料開発部主査)予定。色素増感太陽電池はまだ世界で大量生産している例はない。「将来技術で重要だが、長期信頼性を得るには時間がかかる。今は実力を蓄える時期」(シャープ)と結晶系メーカーは2020年をにらむ。
結晶系の一層の薄膜化でNEDOの未来技術は100マイクロメートル。だが黒川浩助東京農工大学大学院教授は「50マイクロメートル厚までさらに薄くすることで、結晶系の長期レンジが展望できる」と、先端技術のブレークスルーは結晶系の一層の薄型だと強調する。2030年に住宅へは40%以上の需要があり、シリコン効率25%のバルク技術で薄膜より効率が稼げると将来図を示す。
黒川教授は20年後の太陽電池生産は100万キロワットの量産ラインとなると予想。薄くなった太陽電池フィルムを挟み込んだ20センチセルで1.8メートルのモジュールを毎分3.2枚の速度でつくる高速、高効率、割れない製造工程になると指摘する。
【2010年は節目】
現在、太陽電池で日本の技術は先行しており、2010年には節目の時期を迎える。結晶系でトップのメーカーは100万キロワットの時代となるだろう。薄膜系はまだ結晶系の姿を追いかける段階。太陽電池は国産エネルギーでもある。このエネルギーをさらに増強するためにも技術の普遍化への対応と、新技術の開発を絶えず進める必要が高まる。
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■色素増感型太陽電池、2008年見据え研究活発化
(2006年4月13日付
日経産業新聞17面)
コスト安く、異業種も参入
低コストで製造できる次世代の「色素増感型太陽電池」の研究開発が活発になっている。すでに実用化が進んでいるシリコン型太陽電池が原料高という逆風に見舞われており、将来性が買われている。2008年には基本特許も切れる見通しで、新規参入のハードルが下がる。太陽電池メーカー以外の企業も実用化に意欲を示している。
昨年10月の東京モーターショーで公開したマツダのコンセプトカー。未来社会をイメージした車体デザイン、環境問題を考慮したハイブリッドエンジン・・・・。そんな自動車を太陽電池研究者が注目した。後部の天井ガラスに、色素増感型太陽電池を採用したからだ。
太陽電池と言えば群青色または黒っぽいシリコン型が一般的。だが色素増感型は、光を透過できるために天井ガラスとして使える。
マツダは自動車の屋根に太陽電池を設置する研究を進めていたが、シリコン型と異なり光を透過することができデザイン性の高い色素増感型に目をつけた。数年前から専門のメーカーと協力して研究開発を開始。光電変換効率(光を電気に変える効率)は明かせないとしているが、ハイブリッドエンジンに電力を供給する補助電源としての利用を想定しているという。
色素増感型太陽電池は光を吸収して電子を放出する有機色素を利用して発電する。有機色素を付着させた酸化チタンと電解質液をガラスなどの基板で挟んだ構造。光電変換効率は数%台で、15%台(多結晶シリコンタイプ)もあるシリコン型に遠く及ばない難点があるが、原料が安く、製造方法はいたって簡単。同じ発電量を得るための製造コストはシリコン型の3分の1から5分の1に下げることができると期待されている。
色素増感型太陽電池に熱い視線を送るのはマツダだけではない。東京理科大学の荒川裕則教授は日産自動車の支援を受け、昨年4月からフィルムを基板に使った電池を開発中。色素増感型はガラスだけでなくフィルム素材も基板に使えるため、薄く曲がる電池も実現可能。日産は「シリコン型より安く製造でき、プラスチックを基板に使えばデザインの自由度が増す」と説明する。
荒川教授は独自の工夫をこらした。そのままでは光電変換効率が上がらないためだ。電池内に光を封じ込めて有機色素が光を吸収しやすくするために酸化チタンの配列をナノ(ナノは十億分の一)メートルレベルで制御。電子を伝達する酸化チタンの結合を高めるため、圧力をかけて酸化チタンを基板に付着させる手法を採用した。変換効率は5ミリメートル角で7.1%。曲げられるタイプとしては世界最高値。荒川教授は自動車メーカーの関心の高まりについて「2008年に基本特許が切れる機会を最初のビジネスチャンスととらえているのだろう」と解説する。
「半年前から、化学・電機などの企業から製造装置や材料に関する問い合わせが急激に増えた」と指摘するのは、色素増感型太陽電池の研究を手がけるペクセル・テクノロジーズ(横浜市)の宮坂力社長。携帯機器への利用を想定してフィルム電池の開発に力を入れる同社は、桐蔭横浜大学の教授を務める宮坂氏が大学発ベンチャー企業として2年前に設立した。
同社の電池は比較的低温で基板上に焼結させることができる特殊な酸化チタンを使うのが特徴だ。抵抗を抑えるためにフィルム基板上にはITO(酸化インジウムすず)の導電材を塗布してある。変換効率は3%ながら、30センチメートル角という大型化にも成功した。携帯電話機を作動できるほどの電気出力がある。08年の販売を狙っている。
色素増感型太陽電池の魅力は、印刷技術を応用して安くて簡単に製造できる点にもある。シリコン価格が高騰する中、シャープなどの太陽電池メーカーも開発を進めるが、異業種企業も開発競争を引っ張っている。
電線大手のフジクラは2000年に研究開発を始めた。材料技術研究所の北村隆之主査は「原油などのエネルギーに資源的な制約がある中、太陽電池の開発は避けて通れないテーマになると思った」と話す。印刷型回路の製造技術を生かして、抵抗を抑えるための集電配線として使う銀ペーストなども一貫してスクリーン印刷で基板上に形成できる技術を確立した。
同社が狙うのはシリコン型と同じように屋外に設置して家庭用電力をまかなうタイプ。光電変換効率を上げるために優位となるガラスを基板に使っている。10センチメートル角での変換効率は8.4%と目標とする10%に近づいてきた。曇った日などに斜めからの光を吸収しやすいのも色素増感型の特徴だ。
ただ、屋外利用は耐久性が求められる。高温や風雨にさらされると、封止材が劣化して電解質液がもれ出すため、フジクラでは電解質液をゲル化したイオン液体に変えることなどを検討している。北村氏は「08年にはサンプル出荷を開始したい」と意気込む。
アイシン精機も屋外設置を狙う企業。電解質液をゲル状に変え、セ氏85度に耐えるようにした。変換効率は6ミリメートル×9ミリメートルの大きさで8.2%。現在は屋外で耐久試験を実施中。参入企業の増加は色素増感太陽電池の技術革新を促しそうだ。
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■Pennsylvania awards $1 million to
Plextronics for organic PV
(2006年4月
PHOTON International)
http://www.photon-magazine.com/news/news_2006-04_am_pennsylvania.htm
The Pennsylvania Energy Development
Authority (PEDA) in January awarded a combined $250,000 grant and
$750,000 loan to Pittsburgh-based Plextronics Inc. to advance the
development of its ≫Plexcore PV≪ p-type semi-conducting polymer for
organic solar cells. The company plans to use the money to add
expertise in polymer design and synthesis, and purchase deposition
and other equipment in order to produce Plexcore PV prototypes by the
end of this year, says Plextronics VP of Technology Shawn Williams.
The award follows a $300,000 grant from PEDA announced last June (see
PI 7/2005, p. 29). ≫These awards have really been a big boost for
us,≪ says Williams. The company mainly has been focused on organic
LED technology, but Williams roughly estimates that 40 percent of the
company‘s operations now are devoted to
PV.
The Plexcore PV polymer is made as a
powder and dissolved in solvents, resulting in an ink. Currently,
Plextronics is focused on developing this active layer of the organic
cell, which would then be combined with an n-type material for
fabrication into a complete solar cell. ≫We feel that the key to
success [in organic PV] is the active layer,≪ says Williams.
The company hopes to form a joint venture with a partner who has
printing capability. Plextronics would then supply its inks for
printing into flexible plastics or fabrics in high-speed
≫roll-to-roll≪ manufacturing
lines.
For example, Williams notes that
Konarka Technologies plans to introduce organic solar cells in
consumer devices in the near term. The company partnered with
Leonhard Kurz GmbH of Germany last June to bring its ≫power
plastics≪ into large-scale production for portable and consumer
electronics, sensors, and other uses. ≫We would like to see
Plextronics inks in those,≪ says
Williams.
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■市場化目指す新エネルギー産業
第2部太陽光発電(11)
(2006年3月22日付
化学工業日報12面)
「有機EL(エレクトロルミネッセンス)の研究者が、昨年ごろから雪崩を打って参加し始めている」(八瀬清志産業技術総合研究所光技術研究部門副部門長)といわれるのが有機薄膜太陽電池。シリコン太陽電池やCIGS系太陽電池などに次ぐ、次々世代の実用化が期待されている低コストタイプの「究極の太陽電池」と目されており現在、1
キロワット当たり50円前後のコストを一挙に同7円まで引き下げる「ドリームテクノロジー」であるためだ。
有機薄膜型の太陽電池は、色素増感型などとともに低コスト太陽電池の有力候補として開発されているが、かつては変換効率が1%程度と低いことから有機ELなどに比べ、実用化には相当の時間が必要とみられていた。開発当初の平面ヘテロ接合型の構造では、接合面積が小さいことから光電荷分離発生密度が小さく、性能に限界があった。
しかしフラーレンの発見にともなって、バルクへテロ接合が可能になるとともに、フラーレンとポリフェニレンビニレン(PPV)誘導体を混合した発電層を電極で挟んだものでは3%を超える効率が達成され、一挙に脚光を浴び始めた。三菱化学などがフラーレンの大量供給をスタートさせたことも手伝って、有機薄膜型の開発が大きく動き始めている。
産総研は、昨年2ミリメートル角の有機薄膜太陽電池で世界最高の変換効率4%を達成した。今後、大面積の10ミリメートル角で5%を目指すとともに、中期的に複数の電池セルを積層したタンデム型で同10%を狙う意欲的なプランを練っている。また一昨年、新日本石油と米プリンストン大学のグループは、銅フタロシアニンとフラーレンを用いたタンデム構造のセルで5.7%の変換効率をたたき出した。
有機ELが当初見込まれたよりも、大画面ディスプレーへの応用に手間取っていることもあって、研究者が研究対象を太陽電池に切り替える動きが目立ってきた。将来1
キロワット当たり7円を目指すタンデム型では、変換効率がまだ1〜2%程度にとどまっているが、3%程度に性能が上がってきているポリフェニレンやチオフェンなどの高性能なπ共役系材料をp層に用いたタイプでは、世界の化学メーカー間で開発が活発化している。
これらの高分子、低分子のポリマー系有機半導体材料は、液状に混合して基板に塗布するプロセスが採用可能であり、一層の低コスト化が期待できるからだ。そうしたなかで、大日本印刷が印刷法で生産できる有機薄膜太陽電池の開発を本格的に開始しているという。
ウエットプロセスの適用によってロール・ツー・ロール化が可能など、シリコン系に比べて大幅なコストダウンが期待できる。変換効率の向上については、正孔取り出し層に用いる導電性ポリマーの改善によって変換効率3.4%を達成、材料、プロセス両面で工夫を加えて、当面は変換効率5%を目指すという。
有機薄膜太陽電池は、特性的に「使い込むうちに光劣化が減少する」メカニズムを有することが明らかにされ始めており、当初課題とみられていた寿命は、懸念するほどではないことが分かってきた。さらに光の入射角を問わないため、北側への設置が行えるなどシリコン系にはない特徴があるほか、紫外光寄りから可視光以上まで多様な太陽光の波長が利用できる可能性がある。「究極の太陽電池」として、さらに注目度を高めることになりそうだ。
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■市場化目指す新エネルギー産業
第2部太陽光発電(10)
(2006年3月20日付
化学工業日報14面)
今、水面下で業界の耳目を集めているのが、色素増感太陽電池だ。「2008年は、色素増感太陽電池の事業化元年となるだろう。一時の勢いはやや衰えているようだが、化学、電子、自動車メーカーなどが企業化する可能性が強まってきた」と囁かれている。
色素増感太陽電池は、1988年にスイス・エコール工科大学のグレッツェル教授グループが基本構造の特許を取得していたが、08年四月に期限切れを迎える。これを待って、わが国はもとより、海外の多くの企業が事業化を検討しているからだ。
色素増感型のレベルを大幅に引き上げる成果となったのが、同教授らによる酸化チタンナノ多孔膜に色素分子を吸着させる手法の発明。これによって10%近い発電効率を達成、シリコンを超える安価な太陽電池への期待が一気に高まった。
そうしたなかで色素増感度型の利点をさらに高め、太陽電池本体にキャパシターや二次電池などの蓄電機能を組み込み、まったく新しい太陽電池のコンセプトを実現したのが、わが国オリジナルの「光充電型色素増感型太陽電池」である。
太陽電池では不可能だった、太陽の光エネルギーを電力として直接貯蔵することができる画期的な機能を有しているもので、色素増感型の市場化をリードするアプリケーションとして、08年の後半には実用化を前提とした試作品が登場するという。
研究開発を進めている桐蔭横浜大学大学院教授の宮坂力教授、東京大学の瀬川浩司助教授のグループによると「将来的にはシリコン太陽電池の五分の一から十分の一の低コスト化が見込める。シリコンに比べて軽量化と柔軟性を生かした、まったく新しいユビキタス電子機器やウエアラブルな用途への実用化が期待される」という。
宮坂教授は、その電池を企業化するベンチャーの「ぺクセル・テクノロジーズ」を創業しており「08年後半には目覚まし時計やパソコンなどのデジタル機器の電源としてサンプル出荷を計画している」と語る。
同グループは、有機色素の光化学反応を使って発電する色素増感太陽電池をベースに、蓄電機能として「電気二重層キャパシター」を一体化したタイプを宮坂教授が開発する一方、瀬川助教授が「光二次電池」を組み合わせたものをそれぞれ開発中。
「両タイプとも世界に類を見ない独自の発想を具体化した新型電池で、わが国オリジナルの『光を電気として蓄える』まったく新しい機能を有している」(宮坂教授)という。共通部分の色素増感太陽電池はルテニウム色素とヨウ素電解液、酸化チタンナノ粒子を要素としたもので、厚さは15ナノメートル。基板にはガラスとPEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂を用いているが、光電変換効率はプラスチックで6%に達しており、ミニマム目標を8.5%に置いた開発を進めている。
キャパシターの静電容量は、1平方センチメートル当たり2ファラド、電荷量は同4
クーロンを実現するなど、当初の目標を飛躍的に伸ばしており、高性能化が図られている。また二次電池は充電電圧が0.62ボルト、充電容量が235メートルクーロンに達している。
この電池は、セルを直列に結ぶと、従来の電池では実現できなかった高電圧化が容易に得られるほか、光入射角の制限がアモルファスシリコン型の2倍、遠赤外波長の利用が見込めるなど多くの特徴を兼ね備える。
シリコン系やCIGS系とは趣を異にした色素増感型特有の市場がパソコン、携帯電話などのウエアラブル用途に広がることが予想されるほか、ブラインドカーテンなどに加工して家庭の液晶テレビの電源に応用したり、さまざまな発想を生かした展開の可能性がありそうだ。
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■セイミケミカル、複合酸化物事業を拡大、07年にも商業設備
(2006年3月15日付
化学工業日報8面)
セイミケミカルは育成を進める複合酸化物事業のタ−ゲット分野を拡大する。以前から取り組んできた固体酸化物型燃料電池(SOFC)の主要部材や固体高分子型燃料電池
(PEFC)用電極触媒のほか、プロトン導電型燃料電池向けプロトン導電体、色素増感型太陽電池(DSC)向けの増感色素やイオン性液体などを開拓するもので、これにともない2007年末〜08年初をめどに商業設備を建設、供給を拡大する。また前段階として
PEFC用電極専用の開発試作ライン設置も検討する。
セイミケミカルはクエン酸合成法や粒子設計などの技術と希土類酸化物やレアメタルなどのキ−マテリアルを有し、有機、無機両方で高い技術力を持つ開発型企業。複合酸化物は品質が均一かつ比表面積が大きく排水処理が不要などの特徴を持つクエン酸合成法で生産する。
メ−ンのSOFCは当初、PEFCに続く位置付けだったが、各社が08〜09年ごろを目指した実用化の道が見えてきた。同社はSOFCを開拓固体電解質から空気極、燃料極、インタ−コネクタ−まで主要材料を供給でき、今後拡大を見込む。
一方、PEFCは開発の進展にともない多くの課題が出ているが、同社は水蒸気改質やシフト反応、CO選択酸化など水素合成電極触媒などを提案していく。また動作温度で
SOFCとPEFCの中間のプロトン導電型燃料電池向けの開拓にも着手、燃料電池分野を強化している。
さらにDSC向けも展開していく考え。DSCはシリコン系に比べ製造時のエネルギ−コストを大幅に抑制、変換効率は低いものの樹脂フィルム製の曲がる太陽電池やカラフルな太陽電池を作ることができ、新しい使い方が期待されている。同社は低コストな増感色素や酸化チタンに代わるチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)電極、イオン性液体などの開発を進める。
同社はこれら市場開拓によって、現状の月産2トンの試験設備では供給が不足すると判断、07年末〜08年初をめどに商業設備の建設を計画中。ただ、今後PEFC用電極触媒の需要も拡大する見通しであることから、商業設備に先駆け専用の試作ライン設置も検討していく。
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■イオン性液体
優れた特性、量産へ動き活発
(2006年3月3日付
化学工業日報7面)
「イオン性液体」と呼ばれる常温溶融塩がキャパシタの電解質などとして注目されている。この液体は高イオン伝導性と高耐熱、不揮発性を両立するなどこれまでの電解質にない優れた特性を備えており、化学関連など各社の量産を目指した動きが活発化しているほか、大学でもこの分野の最先端技術の確立に積極的に取り組んでいる。研究成果は着実に挙がっており、燃料電池カーなどの普及に取り組む自動車業界などがその動向を注視している。
イオン性液体の開発は1950年代から始まり塩類のイオンを特定の有機イオンに置き換える研究が行われてきたが、当時は不安定なものが多く普及しなかった。90年代に入ってから改良が進みその高機能が紹介されるようになって、有機合成を得意とするファインケミカルメーカー各社が事業化を表明、実用的なサンプルが供給されるようになった。
イオン性液体はカチオンの基本構造によってピリジン系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系の3種類に大別され、カチオン、アニオンの組み合わせで物性を自由に変えることができる。フッ素などハロゲン元素を含んだ陰イオンと、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオンなどを陽イオンにした組み合わせが知られており、こうしたイオンの組み合わせで物性や特性を調整している。
基本的な技術はかなり古いこの液体が最近注目されるようになったのは、自動車業界の環境対応カーの開発だけが要因ではない。電池技術が追いつかないようなモバイル機器の急速な高機能化も大きく関係しているようだ。携帯電話やデジカメ、ノートパソコンなどのモバイル機器は長時間動作はもちろん、高温多湿や超低温など過酷な使用条件での安定した性能維持が不可欠で、開発現場では電源に使われる素材を根本から見直す取り組みが始まっている。
イオン性液体はその素材の候補として有力視されており、電機業界の開発現場では「モバイル電源の次世代電解質材料としての実力は備えている」と評価する関係者も多い。この液体に関する最新の研究成果を分析した開発マンの一人は「イオン性液体が電池の技術革新に加速をつけることは間違いない」と強調。このため各社は競い合うように、水面下でサンプル出荷された複数のイオン性液体の性能試験を行っているのが現状だ。
イオン性液体は太陽電池の電解質や化学反応プロセスの新溶媒、センサー、電解メッキ、ポリマー、可塑剤などの分野でも夢の材料として脚光を浴びつつあり、こうした幅広い用途で使われれば将来、ファインケミカルメーカーの経営を支える大型製品に成長するのは確実と、事業化を目指す企業の関係者はその成長性に期待している。
近い将来、最も大型市場として期待されているのが自動車業界である。自動車は日本の基幹産業である。京都議定書が発効し国を挙げて環境対応に取り組まなければならない今、日本の自動車業界の環境に対する姿勢は世界が注目するところである。
このため自動車メーカー各社は高性能と汎用性を両立させた環境対応カーの開発に全力で取り組んでいるが、その研究のかなりの部分を化学材料の選択に割いているという。電解質はこうした研究のなかで最も関心の高い材料といえるが、イオン性液体が次世代材料としてどれだけの実力があるのか、現在、厳しい評価試験が行われている。温度変化や振動などにさらされる自動車の電源では、高温による発熱や液漏れを防ぎながら電池としての高性能をどれだけ確保できるのかがポイントとなり、イオン性液体の量産を目指す化学メーカー各社のサンプル出荷が本格化している。
環境対応カーはハイブリッド車の量産が軌道に乗りつつあり燃料電池カーも各社が発表、近い将来、本格的な量産が期待されている。今後の環境対応カーの技術革新の焦点は大型リチウムイオン二次電池を採用した自動車の実用化に移りつつあり、同電池用電解質の研究も活発になっている。こうした動きに応えるかたちで産業技術総合研究所は、リチウム金属二次電池用電解質として使えるイオン性液体を開発した。主力成分は4級アンモニウム−イミド塩で高充放電効率を実現した点が技術的なポイント。既存のリチウムイオン電池の2倍以上のエネルギー密度が得られ、大型リチウムイオン電池の開発に取り組む企業も関心を示している。
ここでイオン性液体の事業化を進める各社の動向をみてみよう。先行する日清紡は高耐熱、高耐電圧を実現したイオン性液体の開発に成功。この液体を使ったハイブリッドカー用などの電気二重層キャパシタも開発し、キャパシタのサンプル出荷を始めている。また、電気二重層キャパシタモジュールの開発にも着手し、本格的な事業化を目指して動いている。
また、関東化学は脂肪族系やイミダゾリウム系のイオン性液体などを開発し、キャパシタやリチウムイオン電池の電解質材料として拡販を目指している。さらに、東洋合成工業は脂肪族系、イミダゾリウム系のほか、ピリジウム系などのイオン性液体や第4級アンモニウム塩の開発を完了し千葉工場内に生産ラインを設置した。
関西勢の取り組みも活発だ。関西地区には有機合成の有力ファインケミカルメーカーが多くサンプル出荷を行う各社は、顧客の需要を獲得しようと供給体制の整備に余念がない。その1社のトップは「当社の将来の主力製品。この分野で年間数10億円の売り上げを挙げたい」と意気込んでいる。
広栄化学工業はピリジン系や脂環式アミン系など10種類以上のサンプルを揃え、大阪工場で量産の準備に入っている。また、フッ化水素酸最大手のステラケミファや日本合成化学工業も量産を検討している。森田化学工業も本格的な事業化を目指しており、今後、新規参入を表明する企業も登場しそうだ。
大学での研究も年々活発になっており、東京農工大や東大、横浜国立大、東京工業大、京大、千葉大、岩手大、弘前大などの研究グループが最先端技術の確立に取り組んでいる。産学の研究者で組織した「イオン液体研究会」の活動も軌道に乗りつつあり、来期は新たな展開が相次ぎそう。中堅ファインケミカルメーカーは、受託合成などで培った独自の技術を応用できるチャンスと市場開拓に懸命に取り組んでいる。
一方、イオン性液体は色素太陽電池の高機能化でも威力を発揮しそうだ。この電池は、シャープなどが量産し住宅用太陽光発電システム向けとして量産されているシリコン電池に比べると製造コストを大幅に低減でき、塗料化やフィルム加工などもできるため未来の太陽電池としてスポットが当たっている。しかし、現段階ではシリコンタイプのような変換効率が得られず、耐久性にも課題を残しているため住宅用としての商品化は難しいとされており、ファッション性を前面に押し出した一部の用途で使われ始めているだけである。
イオン性液体はこうした色素太陽電池の欠点も克服する能力があるという。大阪大学、横浜国立大学、フジクラは、電解液をイオン性液体、カーボンナノチューブを使ってゲル化することで色素太陽電池用電解質の高機能を実現しようとしており、太陽電池の変換効率10%、85℃、1千時間の耐熱性の確保を目指している。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の革新的次世代太陽電池プロジェクトで太陽電池業界は新電解質の試験データに関心を寄せている。信州大学の研究グループなどもイオン性液体のゲル化に成功しており、ゲル化を巡った産学連携の研究はさらに活発になりそうだ。
またイオン性液体のフィルム化もこの液体の普及に加速をつけるとみられている。フィルムにすると電解層は液体より薄くなり、超小型でありながら高容量・高電圧を実現したリチウムイオン電池を開発できるという。すでに東京大学、東京農工大学の研究グループがフィルム化に成功しており、特定の方向にだけ高いイオン伝導性を示す異方的液晶ポリマーのサンプルを完成している。研究の過程でイオン性液体の部位を直接、高分子側鎖に付け高分子に異方的イオン伝導性を付加できることを確認しており、フィルム状電解質の実用化を目指している。
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■機能性色素国際会議、6年ぶりに国内開催、5月に大阪市で
(2006年3月3日付
化学工業日報8面)
機能性色素の国際会議である「第7回機能性π(パイ)電子国際会議」が5月15日から
6日間の日程で、6年ぶりに国内開催される。国内のほか欧米などから産学の研究者が集い最新の研究成果を提供するが、今回は薄型ディスプレ−や光記録材料、太陽電池、インクジェットなど先端技術分野に対する応用の実際にとくに話題が集まる見通しで、主催者は研究者に加え色素を利用する立場からの多数の参加を呼びかけている。
会議は近畿化学協会の組織委員会(委員長・中澄博行大阪府立大学教授)が主催、大阪市北区の大阪国際会議場を会場に開催するもので、メーンテーマは「機能性π電子系のさらなる展開」。欧米、アジアからの約100人を含め600人前後の参加者が見込まれている。実質討議は5月16日から始まり、各日とも午前中は基調講演、午後から招待講演および一般研究発表が行われる。ほかにポスターセッションもある。
機能性色素は日本が研究、応用ともにリードする分野。同分野に絞った機能性色素国際会議は1989年に初めて大阪で開催されたが、以降アジア、米国、欧州で開催されており、5回目(独開催)からは「機能性π電子国際会議」に名称を改めて継続、前回は04年の米国開催。
機能性色素を中心とするπ電子系化合物は光や電子、磁気、情報変換などの機能を有するため薄型TV、太陽電池、DVDなど各種情報記録材料に欠かせない材料。最近は医薬品など生体機能へのアプローチも研究されるなど応用領域が広がりつつあり、今回の会議では応用面の可能性が関心を集めそうだ。
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■フロンティアカーボン・奥山克己新社長に聞く
(2006年2月22日付
化学工業日報8面)
フロンティアカーボン(FCC、本社・東京都中央区)の新社長に三菱化学で機能化学開発部門長を務めていた奥山克己氏が就任した。フラーレンの市場開拓を進めている
FCCは発足5年目を迎え、以前からのマーケティング活動に加えて具体的な用途開発の取り組みが活発になってきた。奥山社長は「(フラーレンの)ポテンシャルがあることは分かっている。今後は売り上げが増えるような事業展開を強化していきたい」と抱負を語る。
FCCは2001年12月に発足。友納茂樹初代社長の下、年産40トン能力のフラーレン量産設備を立ち上げるとともに、フラーレンの認知度向上、用途探索などを進めてきた。新社長の奥山氏は三菱化学でディスプレー分野を中心に機能製品の開発を長く担当しており、そこで培った経験をフラーレンの用途開発に生かすことが期待されている。「フラーレンもシーズとニーズのマッチングができつつあり、新たな段階に入ってきたと思う。用途開発についても分野、時間軸でかなり整理がついており、短期、中期、長期に分けて手が打てるようになってきた」との現状認識。
用途開発ではテニス・バドミントンのラケット、ゴルフシャフトなどスポーツ用品が先行したが、今後は産業用途への応用が期待される。「スポーツ用品ではCFRP(炭素繊維強化プラスチック)のプリプレグへの添加によって機械的強度や剛性が向上することが分かってきたが、産業用途でも例えば三菱化学産資が手がけているピッチ系
CFを使った液晶製造用ロボットアームに利用すれば、さらに性能が向上し基板の大型化に対応することが可能になる」と一例を示す。
また、中・長期的な取り組みでは有機薄膜太陽電池、リチウムイオン二次電池、半導体用フォトレジストといったエレクトロニクス・エネルギー分野への適用が楽しみで、「初期の段階からサンプルを供給しながらユーザーと開発に取り組んでいる」。こうした用途ではフラーレンの誘導体が重要になっており、FCCでも有機薄膜太陽電池向けグレードを品揃えしたり、塗布プロセスに最適な溶媒への分散性を高めたグレードを用意。「従来の置き換えではない新たな用途に展開していきたい」。
一方、ナノテク分野では安全性に関する議論も高まってきた。これについては「実用化が進んできたからこその課題といえよう。国でも検討が活発なっているが、カーボンナノチューブ(CNT)は複数の企業が手がけているのに対して、フラーレンはほとんど当社だけ。このため人材面で負担はあるが、やはりリスク管理への対応はしっかりやっていく」。
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■ナノテクノロジー
エネなど3分野が軸・宇部興産
(2006年2月20日付
化学工業日報7面)
宇部興産は、環境/バイオ/ヘルスケア、エネルギー、電子材料の3分野に向けたナノ材料を展示、アプリケーションのさらなる拡大を進める。
環境などでは、これまでに多くの技術賞などを受賞した、光触媒繊維「アクアソリューション」など3製品を紹介。その高い機能を確認してもらう。
電子材料では、宇部日東化成の「有機・無機成分傾斜膜」など3製品を展示。なかでも、電波吸収チラノ粒子は初の出展、紹介となるもので、今後の応用をにらんで、その機能の紹介に力を入れる。
一方、今回の展示でもっとも注目されるのが、エネルギー分野向けの素材。5製品のうち、3製品が初出展となる。「細孔フィリング電解質膜」は、モバイル用電源などとして注目されている、直接メタノール型燃料電池(DMFC)形燃料電池の電解質膜。高分子の自己組織化技術を応用したナノオーダーの細孔を持つポリイミド(PI)製の薄膜をベースとしたハイブリッド材料で、DMFCの大きな課題であるメタノール透過を阻止する機能が高く、高濃度メタノールにも対応できるなど燃料電池用電解質膜として最適ともいえる素材で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトとして開発中。
「機能性炭素材料」は、細孔を持つポリイミド薄膜の構造を維持したまま炭素化したもので、電極材として応用をめざしている。また炭素材では、高配向グラファイト薄膜も紹介する。熱や電子の伝導を一定方向に制御する特異な機能を持つ。
近年、脚光を浴びている「色素増感型太陽電池用色素」も紹介する。計算科学を応用し、太陽電池に適用する色素の電子状態などを解析、最適な色素の設計・開発を行うもので、その成果の一部を紹介する。
当面、従来の環境分野などに加え、エネルギーおよび電子分野向けの材料開発に拍車をかける。今回の出展を通じてアプリケーションの拡大に力を注ぐ。
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■ナノテクノロジー
誘導体も積極展開・三菱化学
(2006年2月20日付
化学工業日報7面)
三菱化学は、三菱商事とナノテクパートナーズとの合弁会社であるフロンティアカーボン(FCC)を通じてフラーレンの用途開発を行っている。フラーレンは安定な炭素分子で、耐熱性をはじめとして多くの特性を有していることから広範な分野での利用が期待されている。すでにスポーツ用品などで実用化されているが、将来的には有機薄膜太陽電池、フォトレジストなどへの応用も見込まれている。このため、FCCはフラーレン誘導体の展開を積極化していくことにしており、需要家のニーズに対応した品揃えを進めていく。
FCCは「ナノム」の商品名でフラーレンの市場開拓を推進中。生産体制としては三菱化学・黒崎事業所(福岡県)に年産能力40トンの量産設備を持つほか、米国でも協力関係にあるTDAリサーチ(コロラド州)に生産を委託している。まず採用されたのはスポーツ用品で、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などへの複合化で強度が向上することが評価されテニス、バドミントンのラケット、ゴルフクラブのシャフト、ヘッドなどに使われている。
FCCは産業用途への利用拡大を図るとともに、太陽電池、二次電池、フォトレジストといったエレクトロニクス・エネルギー分野への展開を強化する。複合材料用途は主に混合フラーレンが使われているが、こうした分野では化学修飾などを施したフラーレン誘導体が必要になる。FCCは誘導体の原料となるC60、C70のほかに有機薄膜太陽電池向けにはベンゼン環などがついたPCBMを開発。PCBMは共役ポリマーとの複合化によって変換効率の向上に寄与することが期待されている。こうした用途は塗布プロセスが多く用いられることから、溶媒への分散性を高めた製品のラインアップを拡充する。また、水酸化、水素化、酸化フラーレンを用意しており、大学など研究機関に供給して用途開発に弾みをつける。
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■酸化チタン、ITO代替の期待高まる、KASTが単結晶薄膜作製成功
(2006年2月9日付
化学工業日報9面)
酸化チタンの新しい用途展開が加速している。現在、白色顔料や光触媒などとして使用されているが、アナターゼ型の酸化チタンに少量のニオブ(Nb)もしくはタンタル
(Ta)を添加すると電気抵抗性が大きく減少し、透明性も高いまま維持されることが判明、ITO(酸化インジウムスズ)に代わる新規透明導電材料として注目される。神奈川科学技術アカデミー(KAST)の長谷川哲也東京大学教授らは、すでに単結晶薄膜の作製に成功しており、応用拡大を目指して多結晶膜、非晶質膜の合成研究を進めている。
酸化チタンは、光触媒として悪臭の除去、有害物質の分解、食品の防菌・防かび、歯の漂白などに注目が集まるが、近年、少量のNb、Taなどをドープすると透明導電性材料となることが見いだされ、ITO代替材料として高い期待が持たれている。
可視光領域で80%以上の高い透明性と電気伝導性(比抵抗で1×10のマイナス三乗)を示すのは、アナターゼ型の酸化チタンで、0.03〜0.06%のNb、Taを添加すると比抵抗が十のマイナス一乗から2×10のマイナス四乗と劇的に変化し、ITOと同等のレベルになる。また、透明性も膜厚40ナノメートルで、内部透過率が可視光領域で95%以上と高い透過率を示した。
同グループでは、パルスレーザー蒸着法(PLD法)を用いて、すでに単結晶薄膜の作製に成功しており、発光ダイオード(LED)やレーザー発振素子などとしてすぐにも利用できる状態に達している。ディスプレーや太陽電池用途には多結晶膜化が必要になることから、製膜条件などを検討するとともに、大面積化にも着手している。
ITOは、発光素子や液晶、プラズマディスプレーの透明電極として利用、その需要は年々拡大している。しかし、主成分のインジウムが希少金属で価格が高騰しており、安価で同等な性能を発揮する代替材料として酸化亜鉛、酸化スズなどの開発も進んでいる。
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■ケミプロ化成
(2006年2月8日付
半導体産業新聞1676号8面)
○有機EL材料事業を拡大
○新設備、新体制、新材料で売り上げ1.5倍狙う
ケミプロ化成(株)(神戸市中央区京町83、KDC神戸ビル14階、(電話)078-393-2530)
は、2006年度に有機EL材料の売上高を1.5倍に引き上げる。06年12月に新設備を稼働させ、供給能力を拡大。新組織への改編で研究・販売体制を充実し、新材料の開発をさらに加速する。
同社は、主力事業であるトリアゾール系紫外線吸収剤の技術を活かし、約10年前から有機EL材料の開発・事業化に取り組んでいる。現在は山形大学・城戸淳二教授の指導を仰ぎながら、山形県の有機ELバレー構想や国家プロジェクトに参画。電子/ホール輸送材料や高Tg高分子材料、オリゴマー型高耐熱性ホール輸送材料などを商品化している。
有機EL材料専門の新生産拠点となる「福島研究所」は、福島県田村市の敷地5696m2
に06年8月着工し、12月から稼働する予定。重合・精製など一貫生産プロセスを備える。これにより生産能力は既存の相生工場(兵庫県相生市)に比べて2倍以上に拡大する。技術者の新規採用にほぼめどがつき、用地造成も完了したことから、着工に向けて設備の詳細設計に入る。
また1月1日付で、有機EL材料などの製造・販売・開発を担当する化学品事業部、技術本部、エレクトロ・ファインケミカル事業部を統合した。機動的な組織展開を図るのが狙いで、人材配置の効率化や技術開発のシナジー効果を高める。有機ELだけでなく、色素増感型太陽電池向けなどにも新材料開発の裾野を広げていく方針。
有機ELの新材料については、電子輸送材料、燐光材料およびそのホスト材料などを開発中。電子輸送材料では、Alq3に代表されるアルミ錯体ベースの材料ではなく、有機化合物のみで構成される低分子材料3〜4種類を開発中。特性として低電圧・省電力が確認できており、複数のパネルメーカーでサンプル評価を進めている。燐光材料は色純度の高い青色発光材料などを開発する。
有機EL材料の05年度売上高は、国内向けがほぼ横ばいながら、海外向けが大幅に拡大。売り上げ比率は国内外でおおよそ50対50になる。これにより当初の事業計画を前倒しで達成する見通し。今後は、新工場の稼働に向けて商品ラインアップを拡充し、
06年度に売上高1.5〜2倍の成長を目指していく。