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■東レリサーチセンター
(2005年3月19日付
半導体産業新聞)
(株)東レリサーチセンターは1978年に東レ(株)の分析・物性評価部門が独立し
て発足した。
高度の専門性を持つ研究者が、最新の分析技術を駆使して様々な課題に取り組んで
いる。
設立以来、エレクトロニクス、材料・素材から環境・エネルギー、ナノテクノロ
ジー、医薬・バイオテクノロジーという幅広い分野の顧客に対して受託分析サービス
を提供してきたため、形態観察、表面分析、構造解析、無機・有機分析、材料物性測
定等々の多岐にわたる分析・解析技術を保有しており、総合的な分析力が特徴であ
る。
エレクトロニクス分野の先端領域、例えばHigh−k、SOI、歪Si、Low
−k、Cu配線、リングラフィーをはじめとする先端半導体およびその実装、LC
D、PDP、有機ELなどのFPD、リチウム電池や、燃料電池、太陽電池、クリー
ンルーム関連の汚染分析などについては、分析解析技術を系統的に蓄積し、即応対制
を備えている。
また、従来からの材料分析にとどまらず、デバイス解析の技術と体制確立にも注力
している。
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■総合1部 イオン性液体を量産へ・ステラケミファ
(2005年3月14日付
化学工業日報)
高純度フッ化物の世界最大手、ステラケミファの新規事業が来期から本格的に動き
始めようとしている。高イオン伝導性と高耐熱・不揮発性を両立させ次世代電解質な
どへの展開が期待されているイオン性液体の生産開始が予想され、医療分野で成果を
挙げている「ボロン10」の供給についても具体策が浮上してきそうだ。同社は売上
高倍増計画を策定、年商200億円超の達成を目指しているが、こうした新事業がそ
の原動力となるのは確実。イオン性液体については供給先も決まりつつあるようだ。
同社の高純度フッ化物の開発・製造技術は世界トップレベルにランクされており、
半導体や液晶関連の大手企業が採用。高純度品の供給では独走状態が続いている。と
くに最近、大型液晶テレビの市場拡大を背景に、液晶生産の歩留まりアップに貢献す
るフッ化物に対する評価が高まっているといい技術の高度化がさらに進んでいるよう
だ。
イオン性液体の開発にはこの最先端のフッ素化学技術が投入されており、すでに複
数の試作品を完成。燃料電池や太陽光発電、ハイブリッドカーにかかわる蓄電デバイ
ス関連の企業などにサンプル供給を行っている。同社のイオン性液体に対する顧客の
反応は良く昨年から量産準備に着手。需要があれば本格生産に移行できる体制は整い
つつあるようだ。すでに試験プラントは稼働しており、顧客の動向をにらんで量産に
踏み切る見通しだ。
一方、中性子吸収能力の高い「ボロン10」については、99.9%という高濃度
で取り出せる技術を確立しており、京都大学などと共同で医療分野への普及を目指し
ている。既存の海外品よりも大幅に製造コストを低減できるめどを得ているといい、
将来、イオン性液体や「ボロン10」などの新規事業で売上高200億円の計上を見
込んでいる。同社は最近、新規事業にかかわる開発体制を強化するため研究関連の投
資にも意欲的で来期はその動向も注目されそうだ。
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■TOTO/医療分野で新事業展開/光触媒とバイオ技術を融合、
ベンチャー企業設立も
(2005年3月11日付
日刊建設工業新聞)
TOTOは、本業の住宅設備・建材事業で開発した保有技術を応用し、医療を中心
とした新分野の事業に乗り出す。トイレや壁・床材、タイルなどで培った光触媒技術
と、トイレに付ける健康検査器具で研究の積み重ねがあるバイオ技術を組み合わせ、
「光触媒・バイオ融合技術」の原理・理論で特許を申請。技術供与など知的財産権を
活用したビジネスや、新製品の開発などを展開する。医療機器メーカーや製薬会社と
ベンチャー企業を設立するなどして、07年度をめどに実用化・製品化していく方針
だ。
同社は、酸化チタンに光を当てると、超親水性と有機物分解の二つの反応が起こる
光触媒技術を利用し、セルフクリーニング機能を持つ外装タイル「ハイドロテクトタ
イル」を94年に商品化。内装の壁・床材、外壁用塗料、生活用品などにも光触媒の
利用分野を広げ、技術供与なども含めて04年度には光触媒事業で約60億円の売上
高を達成する見込み。
一方、バイオ関連の技術では、衛生陶器の付加価値を高めるため、排せつ物で健康
状態を確認できるバイオセンサーの研究を92年にスタート。便器に後付けできる尿
糖検査機「ウェルユー」を99年に発売し、02年には測定時間を大幅に短縮した
「ウェルユーII」も投入している。
同社はこれらの商品開発で培った光触媒とバイオの技術を「光触媒・バイオ融合技
術」として組み合わせ、医療機器などを中心に新たな事業領域を開拓、収益源に育成
する考え。
既に融合技術の一つとして、DNA検査の新方式となる「バイオセンシング技術」
を開発した。二重らせん構造のDNAの一方に色素と酸化チタンを取り付け、検査用
DNAと結合させて可視光を照射。DNA配列が一致していると電流が流れる仕組み
で、個人によって異なる薬の効き方や副作用、病気のかかりやすさなどの予測に役立
つ。
従来より検査装置を小型化でき、コストを約10分の1に抑えることができるとい
う。実用化すれば研究分野のほか臨床分野にも用途を拡大できるとみている。
また、がん細胞だけを死滅させる「ドラッグデリバリーシステム」(DDS)と呼
ぶ技術も開発し、実証試験を行っている。
光触媒物質の微粒子にがん細胞だけを認識する抗体を取り付けて体内に送り込む
と、がん細胞に付着。光を照射するとがん細胞を破壊する仕組みで、抗がん療法への
応用を目指し、有効性の確認を進めている。
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■機能性酸化チタン 特殊形状化など強み・堺化学(企画記事)
(2005年3月10日付
化学工業日報)
堺化学工業は、高機能酸化チタンの製品展開を加速している。得意とする微粒子化
や特殊形状化、結晶性コントロール、高純度化、表面処理などの技術力を駆使し、超
微粒子酸化チタン、光触媒用酸化チタン、超耐候性酸化チタンなどを市場投入、それ
ぞれの分野での高機能化ニーズに的確対応する。
なかでも注目されるのが「リング状ないしチューブ上の特殊形状・高活性酸化チタ
ン」を実現しており、単なるナノ粒子以上の機能を発現すべく、光触媒、色素増感電
池分野などへの展開を進める。「超微粒子ルチル型酸化チタン(STRシリーズ)」
はそのUVカット機能などを生かして化粧品や、一般工業用途を拡大しようとしてい
る。整った紡錘型形状を有し、屈折率2.7と高いのに透明性が非常に優れているの
が特徴で、とりわけUVカットニーズが高まっている化粧品向けに好調だ。
サンスクリーンなどUVカット化粧品では有機化合物を使わない「ノンケム」指向
が強まっており、透明性の高い超微粒子酸化チタンを開発したことで、このニーズへ
の対応を可能にした。UV−A波を超微粒子酸化亜鉛で吸収し、B波を超微粒子酸化
チタンで吸収するもので、超微粒子酸化亜鉛(商品名=ファイネックスシリーズ)を
はじめ、板状硫酸バリウムを製品化している強みを発揮して化粧品原料分野へ展開し
ている。
一般工業用でもUVカットニーズは高く、塗料、インキ、プラスチックフィルムな
どへの積極的な拡販活動を進めており、フラットパネルディスプレーや携帯電話など
の反射防止フィルム向けにも力を注いでいる。
酸化チタンの持つ活性機能を大きく引き出すのとは逆に、活性を抑制した超耐候性
酸化チタンも新たな用途展開に入っており、フッ素樹脂などの超耐候性塗料向けに需
要が広がり始めている。
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■進化する日本力/第2部・理科離れ(6)教材−子供たちの好奇心刺激
(2005年3月8日付
日刊工業新聞1面)
「古い技術ではなく最先端の技術に触れる機会を子供に与えないと」。
教材用キットの開発を手掛ける西野田電工(大阪市福島区)社長の菅留視子は、こ
う語る。子供の新しいモノに対する感度は大人が想像する以上に敏感。このため同社
のキットは、実用化が期待される燃料電池や次世代太陽電池である「色素増感太陽電
池」など新規性があるものに絞っている。
同社は工業用電気設備工事の会社だが、02年に教材用キットなどを開発する「Q
事業部」を立ち上げた。菅は「CSR(企業の社会的責任)と言えば大げさかもしれ
ないが」と照れ笑いしながらも「子供の理科離れは大きな問題」と日本の未来に真摯
(しんし)な目を向ける。
【仕掛けちりばめ】
キットには好奇心を刺激する仕掛けが各所にちりばめられている。燃料電池工作
キット「水空(みずから)電気」は、イオン交換膜や電極、セパレータなどを組み合
わせて、水電解水素発生装置と固体高分子形燃料電池装置を製作する本格的なもの。
ネーミングの妙もさることながら、接合膜を作るのに家庭用アイロンで、はり付ける
などの手作り感が受けている。
色素増感太陽電池のキット「花力(かりょく)発電」はハイビスカスの色素を使っ
て発電する。花びらで電気がつくれる身近さと不可思議さが子供の興味を呼ぶよう
だ。また植物の色素が太陽光を吸収する特性を利用した太陽電池は、理科の幅広い要
素を横断的に含んでもいる。
「焼き付けで失敗したが、手順を変えたら2度目にうまくいった」「水分解セルで
空気が漏れたので食品保存用のビニール袋を重ねたら成功した」。同社に届く子供か
らのメールからは創意工夫が見て取れる。一度興味を持たせることができれば、子供
は飽きることなく追究する粘りを持っている。
【出張講座で感動】
同社は開発、販売だけでなく、キットをいっしょに組み立てる出張講座を年間10
数回行っている。「利益はほとんどない」というものの「感動を分けてもらえる」楽
しい仕事だ。
学習研究社は79年から学校に教材を販売している。当時すでにいくつかの企業が
あり教材販売は後発だったが、地道に取り組んできた。現在は光電池実験キットやパ
ソコンに表示できる顕微鏡カメラなどを手掛けている。
光電池実験キットは光で発電した電力で、14個の発光ダイオード(LED)を発
光させたり、ファンを回転させ、発泡スチロールを吹き上げたりする。顕微鏡カメラ
は顕微鏡で観察した画像をパソコンに表示するための機器だ。
【生命の神秘】
農業生物資源研究所は06年春から、ミイラ化しても死なない蚊の仲間である「ネ
ムリユスリカ」の幼虫を教材として販売する予定だ。「ネムリユスリカ」は干からび
た状態でも水に戻せば生き返り、生命の神秘に触れることができる。
こうした教材が子供たちの興味を刺激し、少しでも関心をもってくれれば、理科離
れの歯止めになる。教材開発を手掛ける企業の役割は決して小さくはない。
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■林原生物化学研究所
(2005年3月5日付
半導体産業新聞)
○有機EL用機能性色素の出荷を実施
○パネルメーカーの受託開発・生産も検討
(株)林原生物化学研究所(岡山県岡山市下石井1−2−3、(電話)086−801
−7721)は、クマリンを母体に分子デザインされた、有機EL用機能性色素の出
荷を実施している。2005年中はサンプル出荷が中心となる見通しだが、将来的に
はパネルメーカーからの受託開発・生産も検討中である。
同社の有機EL用機能性色素は、自然界に存在する物質クマリンを母体に分子デザ
インした、RGB(赤・青・緑)各色の低分子系蛍光色素(ドーパント)。非常に優
れた色純度を示し、特に、緑色の発光材は従来品と比べて2倍以上の発光効率、5倍
以上の長寿命を実現している。緑色の場合は、色純度と寿命に特化しており、携帯電
話やFPD関連からの引き合いが多い。携帯電話などのモバイル機器は発光効率、F
PD関連では長寿命が重視されるため、ユーザーの要望に応じて製品の仕様を変更し
ている。
20年前から色素レーザー用の色素を手がけてきた同社。有機EL用の機能性色素
は、赤色から事業を展開し、その後、2〜3年前から緑色の要望が増加したため、R
GB各色のドーパント作製に取り組んだ。
同社が属する林原グループは、04年五月、世界10カ国において現地事務所を設
立。グローバルな海外ネットワークを構築した上で、有機EL用機能性色素は国内だ
けでなく、海外にも一部供給を開始した。現在のところ、日本メーカーは数社に供給
している。
有機EL用機能性色素は低分子系が中心である。高分子系は発光部位を組み込む過
程で、不純物が含まれるため、その精製に課題を残している。最近は、ユーザーから
短波長領域の要望が多く、510〜450nmの波長領域にて、青色と緑色の開発に
注力。赤色と青色に関しては、まだ発光効率に改善の余地があり、引き続き検討を重
ねている。
生産および開発は藤田工場・藤田研究所(岡山県岡山市)が担当。生産規模は製品
によって異なるが、おおむね量産時には最大で年産15t(機能性色素全体)の規模
が確保できる。
しかしながら、依然として、有機ELには画面サイズの大型化に課題が残ってお
り、本格的な量産段階には至っていない。そのため、05年中はサンプル出荷が中心
だが、将来的にはパネルメーカーからの要望を受けて、受託開発・生産にも着手す
る。今後は材料メーカーとして、有機EL素子用の電子輸送材(素子の輝度や発光効
率を向上させる素材)や色素増感太陽電池など、他分野への応用も計画している。
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■産総研太陽光発電研究センター
(2005年3月5日付
半導体産業新聞)
○ZnOを用いて透明導電膜、発光素子用新材料を開発
○ローム、住重など共同研究
産業技術総合研究所(以下、産総研)の太陽光発電研究センター(つくば市梅園1
−1−1中央第二、(電話)029−861−5022)は、薄膜シリコン、光技術と
電力エネルギーの技術開発部門が統合されたグループで、太陽光発電に関連した半導
体材料やシステム、性能評価の研究のほか、ZnO系酸化物半導体を研究して透明導
電膜の高性能化や発光素子用新材料の開発を行っている。
同センターは、多くの関連機関と共同研究を行っており、ZnO系酸化物半導体の
研究では、高効率発光デバイスの開発でローム、透明導電膜作製新技術の開発で住友
重機械工業、発光機構の解明で埼玉大学と連携を図っている。
このZnO系酸化物半導体の研究では、ZnOがGaNと同様のワイドギャップ特
性による高効率の発光特性を持ち、低温における成長、酸やアルカリによるエッチン
グなどが可能であり、禁制帯幅が大きく透明、さらに低抵抗であることを活用して、
高性能な透明導電膜の開発に注力。ディスプレーなどへの応用技術として考えてお
り、これは次に述べる発光素子用新材料の研究と共通するが、成膜技術や加工技術を
確立することが実用化につながるという。この点、薄膜成長法としてアーク放電を利
用した蒸着法である反応性プラズマ蒸着法をコア技術として開発し、すでに透明伝導
膜の大型化に成功している。
また、発光素子用新材料の分野では、ZnOによる白色発光ダイオードの高効率化
を目指しており、1990年代後半からロームと共同研究を推進している。現在、G
aN系LEDの電極を半透明なNi−Au系から透明なZnO系に代替したことによ
り、内部構造を変更することなく透過率を改善し、発光強度は約2倍を実現した。製
造技術には、不純物の混入を防ぐことや成膜基板上の化学反応を複雑化しないことな
どを理由に、ラジカル源を用いたMBE法(基板温度200〜400℃)を選択して
いる。
これら透明性の高い材料としてITOが製品化されているが、代替材料となり得る
ZnOはInよりも埋蔵量が多く安価なZnを使用しているため、将来的な市場成長
が期待されるという。なお、透明伝導膜や透明電極の製造においては、ITOと同程
度の抵抗率を得るために、ZnO材料の製造過程でGaをドーピングしている。
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■イオン性液体 優れた特性、先端分野から熱い視線(企画記事)
(2005年3月3日付
化学工業日報)
大手自動車メーカーの相次ぐ燃料電池カーの発表などを受けて、「イオン性液
体」、そして溶媒をまったく含まないものを「イオン液体」と呼ぶ常温溶融塩の研究
が本格化してきている。高イオン伝導性と高耐熱、不揮発などを両立しているこの塩
の持つ優れた性能が蓄電キャパシタ用電解質として評価され、この液体の完成度が燃
料電池カー普及のカギを握るとまでいわれている。最近、多くの大学でこの液体をめ
ぐって先端技術の確立を競い合っているほか、一部の企業は来期にも量産に入る見通
しだ。
高極性で蒸気圧がないなどの特徴がある塩類は、約一千度Cまで加熱しないと液体
にならないため、これまでは高温溶融塩が一部の化学反応プロセスで使われているだ
けだった。このため、1950年代から常温で液体の新規の塩類の開発が始まり、塩
類のイオンを特定の有機イオンに置き換える研究が進められてきた。しかし、当時開
発されたイオン性液体は不安定なものが多く、90年代になってようやく実用に耐え
るものが登場、本格的な研究は電解質としての有用性が取り上げられたここ10年ほ
どである。
それだけに、この液体の研究は事実上、手付かずの部分も多く、国立大学の独立行
政法人化を受けて産学連携の取り組みを強化している大学や、新規事業として注目す
る企業がここ数年、専門の研究グループを組織するなどして合成方法を探り始めてい
る。大学関連では東京農工大や東京大学、横浜国立大学、東京工業大学、京都大学、
千葉大学、岩手大学、弘前大学などの研究グループがしのぎを削っており、企業では
日清紡が先行、これに有力化学メーカーが続いている。こうした産学の研究者が参集
して「イオン液体研究会」も設立され、この研究会は東大を軸に活動を始めている。
研究者の一人はイオン性液体について「環境対応カーだけでなく、テレビ付き携帯
電話や高画質デジタルカメラ、ノートパソコンなどのデジタル機器でも今後の課題は
電源の改良。機器の長時間動作や温度対応などで電池の技術革新は不可欠でイオン性
液体の果たす役割は極めて大きい」と強調。「燃料電池が社会に受け入れられ、現
在、サンプル出荷を行っているメーカーが(イオン性液体の)量産を始めれば、未来
指向の先端化学品として急速に普及するだろう」と、期待を寄せている。
イオン性液体は、燃料電池や自動車用大型リチウムイオン電池、太陽電池などの電
解質のほか、化学反応プロセスの新溶媒としての展開、そして、センサーや電解メッ
キ、ポリマー、可塑剤の高機能化を実現する夢の材料として注目されている。しか
し、現状では確かな市場が形成されていないため、医薬中間体の受託合成で技術を蓄
積している中堅の化学スペシャリティ企業などが新事業としてプロジェクトを立ち上
げている。
イオン性液体はカチオンの基本構造によってピリジン系、脂環式アミン系、脂肪族
アミン系の3種類に大別されるが、カチオン、アニオンの組み合わせによって物性を
自由に変えることができる。フッ素などハロゲン元素を含んだ陰イオンと、ピリジニ
ウムイオン、イミダゾリウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオンなどを
陽イオンにした組み合わせが知られており、こうしたイオンの組み合わせで物性や特
性を調整することができる。これは有機合成を本業とするファインケミカルメーカー
の最も得意とするところである。
ある化学メーカーのトップは、この液体の将来性について「これだけの優れた特徴
のある化学品は少ない。いつでも量産できる体制にあり、当社の経営を支える主力製
品になるだろう」と語っている。
イオン性液体の用途として最有力視される電解質。まず、最初に採用するのは自動
車業界だろう。京都議定書が発効し、国家としてさらに環境対応を加速させなければ
ならない今、燃料電池カーなどを普及させることは自動車業界に課せられた大きな使
命である。
このため、自動車業界は電池メーカーと共同で新電源の開発に全力で取り組んでい
るが、高温など過酷な環境にさらされる用途に耐える電源の実用化には、越えなけれ
ばならない多くの障壁がある。そのひとつが電解質であるという。電解質は有機溶媒
などに混ぜて電解液として使っているが、激しい温度変化や振動などにさらされる自
動車の電源では、高温による発熱や液漏れの不安があり、重大事故につながる可能性
を否定できないという。このため、この問題を解決できるイオン性液体が脚光を浴び
ている。
燃料電池カーとともに、電気自動車用大型リチウムイオン電池への展開も注目され
る。この分野の最近の研究成果では、産業技術総合研究所が昨年末に発表した、高充
放電効率を実現したリチウム金属二次電池用電解質の開発がある。この電池は既存の
リチウムイオン電池の2倍以上のエネルギー密度を得られる点が特徴だが、負極の電
圧に耐えられるイオン液体がなく実用化できなかった。産総研は4級アンモニウム−
イミド塩からなるイオン液体を開発しこの課題をクリアした。リチウム金属二次電池
は電気自動車の電源として実用化の研究が行われており、リチウムイオン電池を手掛
ける大手電池メーカーが着目、今後この成果が電池開発に投入されそうだ。
企業の研究では日清紡の動きに注目が集まっている。同社は2002年、高耐熱、
高耐電圧を実現したイオン性液体の開発に成功したと発表、このとき同時に、このイ
オン性液体を使ったハイブリッドカー用などのキャパシタのサンプルも披露した。そ
の後、キャパシタのサンプル出荷を行い昨春には日本無線と共同で、電気二重層キャ
パシタモジュールの開発に着手、今年から事業化を計画している。
また、脂肪族系やイミダゾリウム系のイオン性液体などを展開する関東化学は産総
研の技術を導入しキャパシタやリチウムイオン電池の電解質材料として拡販を計画し
ている。
東洋合成もこうした分野への参入を目指しており、脂肪族系、イミダゾリウム系の
ほか、ピリジウム系などのイオン性液体や第4級アンモニウム塩を開発。千葉工場内
に量産設備を完成させ本格的な供給準備に入っている。
一方、関西勢も電解質への本格展開を目指して動き始めている。
広栄化学工業は
ピリジン系や脂環式アミン系など10種類以上のサンプルを揃え、大阪工場に試作設
備を完成、量産の準備を行っている。
フッ化水素酸最大手のステラケミファや日本合成化学工業も本格的な生産を検討。
森田化学工業は堺工場に試作設備をつくり来期にも量産を始める見通し。
大阪に本社を置くファインケミカルメーカーの役員は「供給先は決まりつつあり、
近く量産に入るだろう。年商数十億円の事業に育つのでは」と意気込んでいる。
さらに、色素増感太陽電池への展開も見逃せない。この電池は普及しているシリコ
ン系に比べると製造コストを大幅に低減できることが最大の特徴。しかし、変換効率
の低さや電解液の液漏れによる耐久性の確保の難しさなどが実用化のネックとなって
いる。イオン性液体を使って電解液をゲル化することによってこの問題が解決できる
と期待されている。大阪大、横浜国立大、フジクラの産学連携で開発が進められてお
り、変換効率10%、八十五度C、1千時間の耐熱性の確保が目標。今年度末には成
果がまとまり来期から実用化に着手する方針だ。イオン性液体にカーボンナノチュー
ブを混合してゲル化するのが技術的なポイントで、NEDO(新エネルギー・産業技
術総合開発機構)の革新的次世代太陽電池プロジェクトとしてその動向が焦点となっ
ている。イオン性液体のゲル化には信州大学の研究グループも成功しており、この研
究についても急速に高度化しそうだ。
イオン性液体の研究で今後の研究課題はこの液体の高分子化だ。高分子のフィルム
に加工すると高耐熱、不揮発、不燃などの特性を維持したまま電解層の小型・薄膜化
が行え高電圧・高容量対応の小型二次電池の開発も可能という。東大、東京農工大の
研究グループは、特定の方向にだけ高いイオン伝導性を示す異方的液晶ポリマーの開
発に成功したが、その過程でイオン性液体部位を直接、高分子側鎖に付け高分子に異
方的イオン伝導性を付加できることを確認している。これによってリチウムイオン二
次電池用フィルム電解質の実用化が可能という。イオン性液体は、こうした先端分野
の材料だけでなく、既存の化学反応プロセスの革新にもつながる魅力を秘めている。
安全でリサイクル可能な次世代溶媒としての製品化を望む声も多く、日本が世界に誇
れる化学品のひとつとしてより完成度の高いものに育成してほしいと期待が集まって
いる。
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■成長領域で活躍する機能性色素(社説)
(2005年3月1日付
化学工業日報)
染料や顔料を技術系譜にした機能性色素の活躍領域が広がっている。古来色材とし
て使われてきた染料や顔料だが、近赤外線吸収やエネルギー変換といった色以外の性
質も注目され、機能性色素化学という学問分野を形成しつつある。とくに電子情報産
業の発展に機能性色素は近年大きな役割を果たしており、わが国化学産業が付加価値
を高めていく車輪のひとつとしてさらなる飛躍を期待したい。
色素は可視光線を選択的に吸収して固有の色を示す物質であり、われわれの生活の
回りに満ちあふれている。染料や顔料は塗料、インキ、衣料品、プラスチックなどさ
まざまな製品の着色に使われ、これらがなければ社会が成り立たないほど大切な存在
といえる。機能性色素と従来の色素との境界は明確ではないが、機能性色素の場合は
着色以外の機能も含み、少ない外部エネルギーで物性などが変化する色素の性質が多
方面で利用されている。
機能性色素の用途はさまざまだが、身近なところではCDやDVDなどの情報記録
メディアに使われている。光ディスクの溝の中には近赤外線吸収色素が入っており、
特定波長を吸収してデータを記録する。また、液晶用のカラーフィルターには赤、
緑、青の色素が微細にパターニングされている。最近では太陽電池にも機能性色素が
使われている。総じてみれば、情報記録や表示、エネルギーといった成長領域に機能
性色素が入り込んでいるといえる。
日本のファインケミカル業界でかつて存在が大きかった合成染料は、ここ十数年で
市場が激減した。繊維産業の生産が低賃金国にシフトした影響が大きく、合成染料の
昨年の国内生産量は1991年の半分以下に縮小。一方で、中国からの輸入量は欧州
全体からの輸入量に肉薄した。合成染料の国内生産減にいつ歯止めがかかるかは見え
ない状況だが、合成染料の技術は機能性色素のなかで息づき、そして進化している。
近年、中国やインドがファインケミカル産業でも目覚ましい発展を遂げている。こ
うしたなかで日本が生き残るには、機能性や付加価値のより高い製品を創出していく
しかない。その基盤になるのは高度な技術であるが、技術の大半は系譜として発展し
ていくものであり、機能性色素は日本の化学産業の今後の方向性を示すモデルケース
のひとつになる。
機能性色素化学という学問分野は比較的新しく、学際的な領域を対象にしている。
一般的な着色という世界からみれば市場としてはニッチだが、大きな可能性を秘めて
おり、今後の用途展開と進化が注目される。
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■北野精機、有機電子デバイス作製から性能評価までできる装置開発
(2005年2月15日付
日刊工業新聞)
北野精機(東京都大田区、北野雅裕社長、03・3773・3956)は、有機電
子デバイスの作製から性能評価までを10のマイナス8乗パスカル以下の超高真空環
境で一貫作業できる装置を開発した。作製したデバイスを大気にさらさずに済むた
め、より高精度な評価結果を得ることができる。価格は1台2000万円から。大学
や企業などの研究開発現場向けに、初年度5台の販売を目指す。
同装置は国内の大学などと共同で開発した。薄型ディスプレーなどへの応用が期待
される有機トランジスタや有機エレクトロルミネッセンス(EL)、有機太陽電池な
どのデバイス作製と性能評価を1台でこなせる。
装置は有機材料蒸着室、金属材料蒸着室、評価室の3部屋を連結した構造で、各部
屋を試料が行き交う仕組み。評価室ではデバイスの構造や電流電圧特性、輝度、発光
効率などを測定できる。
試料の移し替えが不要で、デバイスの作製と評価を一貫して超高真空下で行うた
め、より高精度な評価結果が出せる。チャンバーの表面処理も徹底し、酸素や水など
デバイスに悪影響を与える不純物がチャンバー内に極力残らないようにしている。
同装置では、蒸着室の増設や別の評価装置の後付けも可能で、「ユーザーの幅広い
ニーズに対応していきたい」(北野社長)としている。
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■日本バイリーン、攻めの経営に転換、自動車不織布資材など
(2005年2月4日付
化学工業日報)
日本バイリーンが攻めの経営に打って出る。この数年間取り組んできた経営資源効
率化の成果が得られていることから、その資源を積極的に投資へ振り向けるもので、
自動車向け不織布資材など海外での新たな設備投資を実施する。また、光触媒担持不
織布など差別化を追求できる新製品も着実に生まれてきているため、新市場創出に向
けた開発をさらに強化していく。こうした取り組みにより、2005年度を最終年度
とする中期経営計画を達成し、次期中計での飛躍に向けた攻めの事業基盤を構築す
る。
日本バイリーンは2003年度にスタートした中期経営計画のなかで、一層の経営
資源効率化とともに、グローバルでの最適生産体制構築を推進してきた。効率化では
品種整理、生産ライン統廃合などにより、5年間で40億円超のトータルコスト削減
を実現。グローバル展開では昨年、米国のフロアマット拠点での増設に加え、中国の
自動車用不織布資材新拠点が今年、相次ぎ稼働する。こうした取り組みにより今年
度、中計目標であった連結経常利益32億円を前倒し達成できる見通しとなってい
る。
同社ではこれらで得られた経営資源を投入し、攻めの経営に転換する。中国では蘇
州の自動車用天井材・内装材事業に加え、長春の自動車用フィルター新工場が先月稼
働し、天津のフロアマット拠点も今年三月から稼働を開始する。これにより本格的な
現地供給体制を構築、市場開拓に拍車をかける。また、今後中国では自動車資材に限
らず1−2件の新規事業展開を独フロイデンベルグと検討、年内にも詳細を決定する
見通しで、中期的に10億円程度を投資する考えだ。
一方、米国ではテネシー州のフロアマット拠点で増強設備が昨年十一月に立ち上
がった。日系自動車メーカーに加え、ビッグスリーや韓国メーカーの採用など順調に
市場開拓が進んでおり、すでにフル生産となっていることから次期増強も検討、北米
でのシェアを20%まで引き上げる。
また、独自のナノ加工技術を駆使し開発した光触媒担持不織布など、差別化製品の
開発・市場創出も強化する。光触媒担持不織布は繊維表面に直接酸化チタン粒子を固
定したもので、バインダーを用いた従来品と比べ5−10倍のスピードでガスを分解
することが可能。すでに多くの引き合いがきており、用途開発を進めている。今後は
他の機能性粉体を担持した高機能不織布など、次代の成長を担う新製品・新市場創出
に積極的に投資していく。
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■進化する日本力/第1部「知」の最前線(4)北九州の技術力を結集
(2005年1月27日付
日刊工業新聞)
「好きな仕事をしようという時に場所は選べない」―。九州工業大学大学院生命体
工学研究科教授の早瀬修二(50)は富山県の出身。
東芝の研究者の職を辞して、
01年に新設された北九州学術研究都市(北九州市若松区)にある同大に飛び込ん
だ。現在は九工大と北九州市立大、北九州高専、新日鉄化学のメンバーとともに「色
素増感型太陽電池」の実用化研究に取り組む。
【研究成果を共有】
会社員時代は半導体など電気・電子材料の研究者としてキャリアを積んだ早瀬。当
時も大学の研究者とのかかわりは多く、「大学と企業の風通しは良かった」と感じて
いた。
“学”の立場になった今、「グループ内で技術は全部オープンに、研究成果
はできるだけ共有化したい」と語る。
早瀬らは色素増感型太陽電池の中でも、酸化チタン(チタニア)半導体電極の表
面、界面の制御技術を中心に研究を進めている。製造コストが高い太陽光発電システ
ムを、商用電源並みに使いやすくするのが狙いだ。「世界トップレベルとなるセル変
換効率(太陽光エネルギーを電気に変換する割合)12%」を最終的なターゲットと
する。
「チタニアの研究が盛んな土地」と北九州を評する早瀬。「チタニアをきれいに塗
る技術や乾かす工程は小さな企業でも携わることができる。中小の多い北九州の技術
力を集めれば大企業にも負けないはずだ」。かつて“鉄の町”として一時代を築いた
北九州。早瀬らの研究は地域再生に向けた取り組みの一つとしても注目が集まる。
水上春樹(43)が最初に起業を意識したのは、大手化学会社の米国駐在員をして
いた90年代初頭。バイオテクノロジーをめぐる当時のダイナミックな動きをじかに
感じた水上は、「こいつらに負けていられないな」と日本でビジネスを展開すること
を決めたという。
【環境と共存】
帰国後、シンクタンク勤務を経た水上は、バイオテクノロジーを駆使した環境問題
の解決をコンセプトに、エンバイオテック・ラボラトリーズ(東京都江東区)を99
年に設立する。まず取りかかったのが環境ホルモンなど汚染物質の測定キット開発。
メダカなどの生物や生体物質を用いて汚染を把握するもので、同社の中核事業だ。
水上は事業を診断、修復、共生の3段階に分けている。現在は診断を経て、二つ目
の修復へ事業を広げた段階。子会社を設立し、汚染土壌の浄化を試みている。三つ目
の共生は模索中だが、「環境と人間との共存」(水上)を事業として成立させるとい
う。
これらのビジネスを成立させるため、水上の選んだ企業のあり方が「ネットワーク
・ラボラトリーズ」という形態だ。本社機能は最小限にとどめ、各地の公的研究機関
や大学の研究者と共同研究に特化、製品につなげており、細分化された現在のバイオ
テクノロジーを融合させるには有効な手段という。研究開発の印象が強い同社だが、
水上はあくまでメーカーを自負。「我々の仕事は商品となって初めて評価」を得ると
言い、大学などの技術移転が思うように進まないのは、「メーカー的発想が足りない
からかもしれない」と指摘する。
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■曲げられる画面用素材 京都大が共同開発
(2005年1月26日付
中国新聞)
いつでもどこでもインターネットに接続できる「ユビキタス社会」に向け、京都大
国際融合創造センター(センター長・松重和美副学長)は二十五日、軽くて曲げられ
るプラスチックシート状画面の素材を企業と共同開発したと発表した。
シートに電子回路や太陽電池、メモリーなどを組み込み、洋服の袖などに縫い付け
られる新たな携帯機器や電子新聞を数年以内に作りたいとしている。同センターによ
ると、開発されたのはプラスチックに有機物を織り込んだ透明な素材で名刺大。画像
を表示する発光素子を載せて曲げても損傷しないことが実験で証明された。