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『 フジクラ、色素増感太陽電池の開発を加速、05年度に実用化の判断 』

2004/7/14,化学工業日報7頁

 フジクラが開発を進めている色素増感太陽電池は、電解質にナノ粒子を用いたイオ
ンゲル、またフッ素ドープ酸化スズ膜(FTO)/インジウムスズ酸化物膜(IT
O)複合成膜ガラスや集電グリッドにより、セルの大型化と性能向上が進んでいる。
さらにイオンゲルに適した新型のパッケージを開発するなどステップを着実に踏んで
おり、2005年度には実用化の判断を行う考えだ。
 同社の色素増感太陽電池の開発は、従来電解質に使われてきた高揮発性のアセトニ
トリルに代わり、イオン性液体にカーボンナノチューブ(CNT)などナノ材料を混
ぜゲル化したナノコンポジットイオンゲルを用い耐久性を高めたこと、5センチメー
トル角のミニセル中心に開発する他社とは異なり、FTO/ITO複合成膜ガラスを
開発して大型セルの実用化を目指しているのが特徴。ともに昨年の発表後も一層の性
能向上を目指し研究に取り組んでいる。
 イオン性液体のゲル化は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の革
新的次世代太陽電池プロジェクトで、大阪大学、横浜国立大学と共同研究を進めてき
た。これまでイオン性液体をゲル化すると性能は低下するとされていたが、ナノ材料
の添加で局所的にヨウ素イオンが高濃度化して規則的配列を形成、物理的な移動なく
電子を運ぶことができ、液体時より高性能を示すことがわかった。従来のアセトニト
リル系の発電効率6.8%に対し、イオンゲルは昨年発表時で3.8%、現在は4.
6%まで向上、さらにイオン性液体をエチルメチルイミダゾリウムジシアノアミド
(EMIm−DCA)に変更したことで6.4%まで向上、7%台が目前となってい
る。
 FTO/ITO複合成膜ガラスは、真空プロセスが不要で低コストなスプレー熱分
解法(SPD法)により、優れた導電性と透明性を持ちながら、耐熱性の低さがネッ
クのITOの上に高耐熱のFTOを重ねて成膜することで、六百度Cの高耐熱性と導
電性、透明性を両立した。またフレキシブルプリント配線板(FPC)技術を生か
し、導電ガラス上に配線を印刷した集電グリッドを開発、すでに量産技術の研究に着
手している。さらに電解質のイオンゲルに適応した新パッケージも開発した。電極の
上にイオンゲルを塗布しコンポーネント化、これをセルとともに外枠にはめ込み、密
封するシンプルな構造で、密封信頼性も高く、電極間のギャップも小さい。
 同社の色素増感太陽電池は順調に性能が向上しており、2005年度には生産体制
を含めた実用化の判断を下す方針。ただし、コストはまだ課題。同社が使うルテニウ
ム系の色素は原料メーカーが量産化で1グラム当たり数千円以下に下がると表明して
おり、大きな障害にはならない。しかし、導電ガラスのコストはまだ高く、最高でも
1平方メートル当たり2千円程度まで下がってこないと厳しい状況で、今後ガラス
メーカーとも話し合いながら、コストダウンの道を模索する。NEDOの目標とする
1ワット=50円にはまだまだ遠い状況ではあるが、2010年までに太陽電池の市
場が立ち上がってくるのは確実であり、今後さらなる研究開発活動の進展が必要とさ
れている。

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『 日立マクセル、磁気テープ応用、拡大――顔料インク製品化・販売 』

2004/7/14,日経産業新聞5頁

 日立マクセルは磁気テープの応用事業を拡大する。このほど基幹技術である磁性体
の製造・塗布技術を転用してインクジェットプリンター向け顔料インクの製品化に成
功、販売を始めた。さらに同技術を応用して、液晶パネルに使う透明導電膜や電子部
品の研磨材などの研究開発を進める。磁気テープは需要が伸び悩んでいるため、事業
の多角化を急ぐ。
 マクセルが開発した顔料インクは粒子の表面に微細処理を施して粒子が固まるのを
防ぐと同時に、磁気テープの粉体塗布技術を応用して樹脂を改良した。この結果、イ
ンクをスムーズにノズル噴射できるほか、印刷物への定着率を高めることができる。
光沢のあるグロスコート紙にも印刷しやすいという。
 顔料インク事業化の第一弾として、マクセルは米イーストマン・コダック傘下で印
刷関連製品を手掛けるコダックヴァーサマーク社(オハイオ州)に水性顔料インクの
供給を始めた。磁気テープの生産拠点である京都事業所(京都府大山崎町)に専用の
生産設備を導入し、量産体制を整えた。ユーザー企業を積極開拓し、2006年度は
インク事業で20億円前後の売上高をめざす。
 顔料インクは染料インクに比べて印刷物の耐水性が高く、色あせが少ない。このた
めインクジェットプリンター向けに需要が高まっているが、粒子同士が固まりやす
く、高速でノズル噴射するのが難しかった。
 マクセルは磁気テープ技術を活用した新規事業を強化している。既にリチウムイオ
ン電池の開発に磁気テープの製造技術を採用しているほか、太陽電池やバイオチップ
の開発にも力を入れている。

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『 [エコノみやこ]第一工業製薬社長・津田章裕さん/京都 』

2004/7/10,毎日新聞26頁

◇高機能化学品でリードする企業へ−−第一工業製薬社長・津田章裕さん(59)

 「第一工業製薬」という名前を聞いても、どんな会社かすぐに分かる人は少ないか
もしれない。しかし「モノゲン」というブランド名を知る人は多いだろう。明治時
代、生糸を生産する薬剤の製造から始まり、現在は界面活性剤、食品添加物、樹脂素
材、電子材料などを扱う独創的な化学メーカーとして安定した地位を築いている。5
年後は創業100周年。新たな事業展開のビジョンなどを、中京区の本社で津田章裕
社長が熱く語ってくれた。【奥野敦史】

◆「第二の創業」へのステップアップを

 ――消費者には、「モノゲン」は洗剤のイメージですが、現在はさまざまな産業用
の界面活性剤(水と油など、性質の異なる複数の物質の境界面=界面の性質を変える
物質)全般が事業の大きな柱と聞きます。

◆私たちの会社は、まゆから糸を引く際に使う解舒(かいじょ)液の製造、販売から
スタートしました。その後、洗剤を中心とした界面活性剤事業を発展させ、現在では
五つのコア事業を展開しています。
 まず伝統の界面活性剤事業。繊維工業用だけでなく、食品添加物やエレクトロニク
ス産業で使われるフロン代替洗浄剤、重油流出事故の際に利用される油処理剤など多
方面に広がっています。第二に水溶性高分子事業。医薬品や化粧品、セラミックス用
の増粘剤や安定剤などで、国内最大、世界3位の製造能力があります。
 第三、第四の柱は水系ウレタン事業と機能性ウレタン事業です。ウレタン樹脂は車
のバンパーのようなものから塗料、接着剤、繊維など多用途に使われていますが、そ
の中で揮発性の有機溶剤を含まず、環境に優しい製品が水系ウレタン。止水剤や絶縁
材などの特殊な機能を持つものが機能性ウレタンです。五つ目は樹脂添加剤事業。ゴ
ムやプラスチック用の基材(ベースとなる素材)や、帯電防止剤、難燃剤などです。

 ――さまざまな産業を支える重要な製品ばかりですが、一般の消費者には少し縁遠
いかもしれません。

 ◆そういう面はあるでしょうね。以前は「モノゲンユニ」「アルコカラー」など家
庭用洗剤を販売していたのですが、現在、その事業は当社が創立にかかわった別会社
に引き継ぎ、私たちは工業用製品に絞っています。そのせいもあって、私たちの製品
はどちらかと言えば、主役ではなく脇役。添加剤として使われるものがほとんどで、
ブランド名が正面に出たり、当社のブランドが一般消費者の皆様の目に直接触れるこ
とはあまりありません。
 現在、六つ目のコア事業を立ち上げようと、社内に号令をかけています。具体的に
は電子デバイス材料事業です。折り曲げられる新型の太陽電池や、軽くて寿命が長い
新型電池の開発を考えています。電池は電子機器の中では特に重要ですし、コン
ピューター等のモバイル機器、電気自動車や電気自転車などへの利用が見込めます。
 既存の事業も、うちしか出来ない特徴を打ち出すことが必要です。顧客の求めに応
じて、私たちは素材の付加価値を高めたり、環境により配慮した商品で勝負したい。
「高機能化学品のリーディングカンパニー」が、私たちの目指す会社の姿ですね。

 ――新事業の立ち上げはどのような形で進めているのですか。

 ◆30代の若手社員を中心に、分科会形式で検討してきました。これまで会社の中
長期計画に参画することが少なかった、各地の工場の担当者にも入ってもらいまし
た。若手社員のアイデアは突拍子もないものもありますが、新しいことを始めるには
既存の価値観では出てこない「夢物語」を語ることが大切ですから。
 5年後、創業100年の節目に、会社の次の100年を支えるコア事業を考えてい
かねばなりません。よく「創業は易く守勢は難し」と言いますが、私たちには95年
の歴史があり、会社を維持するノウハウはある。むしろ課題はいかに「第二の創業」
と言えるステップアップを果たすか、です。それが私の在任中のテーマですね。

☆メモ☆

 カイコのまゆから絹糸をつむぐための薬剤「蚕繭解舒液(さんけんかいじょえ
き)」を発明した中村嘉吉郎氏が1909(明治42)年、友人の負野小左衛門氏の
経営する線香屋の一角に設立した「負野薫玉堂解舒液部」が前身。15年には線維工
業用の「玄武印マルセル石鹸」を発売し、輸入せっけんに代わって国内で普及させ
た。翌年、現在も研究所がある下京区七条千本に本社を移転。
 18年に第一工業製薬株式会社を設立。34年にベストセラーとなった高級アル
コール洗剤「モノゲン」、64年に「モノゲンユニ」をそれぞれ発売し、人気を集め
た。当初は繊維工業向け製品が中心だったが、現在は食品、医薬品、電子機器など広
い分野をカバーする高機能化学品メーカーとなっている。
 津田章裕社長は45年、愛知県生まれ。67年入社で資材部長、総合企画部長を経
て今年4月に社長就任。趣味はゴルフ、作曲、句作など多彩。

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『 明日のターゲット株関西ペイント塗布型太陽電池にも注目 』

2004/7/9,日本証券新聞

 関西ペイント(4613)になお割安感。アジア各国での自動車塗料の売り上げが
好調で今3月期も最高益更新の見込み。連結PERは15・9倍だ。特にインドやタ
イで伸びており、中国の関連会社も連結業績に寄与し始めている。また同社には塗布
型フィルム太陽電池の開発という材料もある。フィルム状の太陽電池が実現されれ
ば、あらゆる物体の“表面”が電池になり得る。同社が開発しているものは透明化や
彩色化も可能とされ、注目度は高くなっている。2002年2月をボトムに一貫して
上昇している銘柄、中長期的には4ケタ乗せも。

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『 高知工大、酸化亜鉛の導電膜、共同研究を開始 』

2004/7/7,日経産業新聞9頁

 【高知】高知工科大学マテリアル・デザインセンター長の山本哲也教授は酸化亜鉛
の透明導電膜の実用化に向けて、複数企業が参加する共同研究開発プロジェクトを立
ち上げる。液晶パネルなど透明電導膜に使うインジウムの価格が高騰。酸化亜鉛はイ
ンジウムの代替材料として注目が高まっている。早期の実用化には、材料や製造装置
などの関連企業が共同で開発を進めることが必要と判断した。
 工科大は今月の二十、二十一日に、東京・霞が関の尚友開館で、酸化亜鉛の透明導
電膜の実用化に関心を持つ企業20―30社を対象に研究セミナーを開く。この場で
山本教授がこれまでの研究開発成果を発表、さらに共同研究開発プロジェクトへの参
加を募る。
 酸化亜鉛の透明導電膜の実用化には材料や装置メーカー、実際に導電膜を利用する
パネルメーカーなどの協力が欠かせない。工科大はそれぞれの分野から二社程度の企
業に参加してもらい合計5―6社と工科大によるチームを組成したい考え。工科大の
隣接地にある高知テクノパーク(土佐山田町)にプロジェクトの拠点を設け、3年以
内の実用化を目指す。
 既に山本教授は国の予算を使い、住友重機械工業などと共同で1メートル四方の酸
化亜鉛透明導電膜の開発に成功。液晶パネルや太陽電池向けに商品化できる道を開い
た。ただ実用化にはさらに量産技術などの開発が必要で、実際にニーズを持つ企業同
士をチームにすることが必要と判断した。
 現在、液晶やプラズマのパネルの透明電導膜に使う酸化インジウムすず(ITO)
は、レアメタル(希少金属)の一種であるインジウムが主原料。

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『 島根県、有機太陽電池専門の蒋氏、新産業創出へ招へい 』

2004/7/6,日本経済新聞地方経済面(中国A)11頁

 島根県は新産業創出プロジェクトを進める一環として、県産業技術センターの主任
研究員に有機太陽電池の専門家を招へいした。中国科学院化学研究所の元助教授、蒋
克健氏(39)で、同氏を加えた専任チームが有機太陽電池などを応用した製品開発
に取り組む。
 蒋氏はこの分野で多くの論文を発表し、2001―03年には大阪大学に客員研究
員として在籍したこともある。県産業技術センターでの任用期間は七月から06年三
月までだが、最長5年以内の契約更新もあり得る。センターの「新エネルギー応用製
品開発」チーム(五人)で研究に従事してもらい、県内企業などへの技術移転を目指
す。
 島根県は昨年度から低コストの有機太陽電池などを活用した製品開発などに力を入
れている。

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『 光触媒 神奈川科学技術アカデミー・藤嶋昭理事長(企画記事) 』

2004/7/5,化学工業日報5頁

 現在、光触媒産業の規模は一説には1500億円程度とみられるが、周辺産業への
インパクトはより強まるだろう。外装分野、とくにガラス分野への本格普及が始まろ
うとしている。これが実現すれば、市場規模は一挙に拡大するに違いない。
 光触媒効果を発見してから約30年が経過した。一時、停滞したとの見方もあるだ
ろうが、新しい産業としては順調に発展してきたのではないだろうか。これまで、塗
料やフィルターを筆頭に、防音壁、コンクリートなど幅広い製品に採用が進んでき
た。ガラスへの本格採用はこの流れを加速するものとして期待している。
 今後の新しい流れとして、従来の紫外線反応型に加え、可視光型がどのように成長
していくかということだ。屋外への対応だけでなく、室内向け製品への利用を大きく
前進させるものとして高い成長性が期待される。
 このように、大型用途の出現、新しいタイプの光触媒の投入などで、これからは市
場拡大はさらに加速されるだろう。それだけに、従来以上に、機能や製品に対する信
頼性を高めていく必要がある。そうでないと、せっかくの成長性に水を差しかねな
い。
 そのためにも、光触媒標準化委員会における、殺菌、浄化など分科会でのJIS提
案活動、国際標準化機構(ISO)への提案活動を強化していく必要がある。消費者
を中心として、安心して光触媒製品を使える体制を整備し、信頼をかちとっていくこ
とが今後の普及の鍵を握っている。
 また、新幹線の車内向け空気清浄機、窓ガラスへの採用がスケジュールにのぼって
いる。実現すれば、一般の人から子供まで、光触媒に対する認知度が一挙に高まる。
このあたりも、今後の光触媒普及に大きく貢献できるだろう。
 光触媒は日本独自の技術。超親水や殺菌、防汚など多彩な機能をもつ。それらを考
えると、応用分野ももっと広がるだろう。たとえば、光による水分解で酸素、水素を
得ることができる。光触媒作用発見の端緒となった現象だが、近年、太陽電池への応
用研究も進展している。このようなエネルギー分野への応用も浮上するかもしれな
い。
 光触媒は奥の深い技術。まだまだ、多くのブレークスルー発見が期待できる。

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『 光触媒 空気浄化にターゲット・テイカ(企画記事) 』

2004/7/5,化学工業日報6頁

 テイカは、酸化チタンメーカーとして蓄積した豊富な技術・知見を駆使し、光触媒
酸化チタンの市場ニーズにこたえる製品開発を推し進めている。なかでもNOxなど
の空気浄化に関する性能試験方法がこのほど、JIS制定されたことから、同分野で
のガスに特化した光触媒用酸化チタン粉体の応用拡大に力を注いでいるほか、今後、
JIS化が想定される水質浄化関連についても拡販体制を強化している。また色素増
感太陽電池や可視光型光触媒酸化チタンの開発に取り組むなど、新規用途および新規
市場開拓を積極化している。
 テイカは国内酸化チタン大手メーカーとして、微粒子酸化チタンなど高機能製品開
発で高い技術力をもち、これらの技術・知見を生かし、多様な光触媒酸化チタンをそ
ろえている。光触媒については、粉体をはじめとして、ゾル、スラリーなどを相次い
で市場に投入、脱臭、防汚、抗菌・防カビ、大気・水質浄化といった幅広い用途へ展
開している。
 とくに、最近では光触媒の空気浄化性能試験方法がJIS化され、空気浄化性能の
正確な測定が可能となったことから、同分野での用途開拓を加速している。さらに今
後、水質浄化分野に関しても規格化が進むとみられており、フィルター用途での需要
拡大を見込んでいる。
 一方、新規分野として色素増感太陽電池用光触媒酸化チタンについては、大学など
との共同研究を目指している。このほか可視光型光触媒の開発にも着手している。
 また、新規市場開拓の一環として、海外展開に乗り出している。今年から韓国、台
湾、ヨーロッパ地域向けに繊維や外壁用途などで輸出販売を開始した。さらに中国に
おいても、今年秋、上海で開催される光触媒国際展示会に出展する予定で、成長が見
込める海外需要獲得に本格的に取り組む構えだ。
 問い合わせ先=テイカ・新規事業推進部(電話・06−6243−5819)。

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『 【技術立国 日本の逆襲 第4部(10)】新型太陽電池 』

2004/7/2,産経新聞大阪朝刊オピニオン17頁

◆日本独自の技術開発に期待

 兵庫県三田市にある関西学院大学の緑豊かな神戸三田キャンパスは土曜日とあって
人影はまばらだった。そのなかで、ひときわ熱のこもった討議を重ねる教室があっ
た。
 文部科学省の研究プロジェクト「光エネルギー変換研究センター」の研究報告会
で、テーマは太陽電池の新型「色素増感」の開発の現状。この太陽電池の研究に取り
組む大学や企業の学者・研究者らが全国から集まっていたのだ。
 「色素増感」といわれるタイプは従来の太陽電池が主にシリコンの半導体を使って
光を直接、電気に換えていたのに対し、ヨウ素の溶液を仲介役に電気を発生させる仕
組みだ。
 光が当たると、電極に付着した増感色素が反応して電子を放出する。その電子は、
外部の電極間を電気として流れ、もう一度電池内にもどったとき、溶液中のヨウ素イ
オンが電子を受け取るという電気的な化学反応が起きる。これで電子を繰り返し利用
する経路が完成するわけだ。
 植物が太陽光線を化学エネルギーに換えて蓄える光合成の仕組みによく似ている。
 この理論は1991年にスイスのグレッツエル博士らが提案した。材料が安く手に
入り、製造システムも巨大にならないので安価にできるとあって、日本でも平成12
年ごろから大学や企業から研究報告が出されるようになってきた。
 報告会では、変換効率の向上が焦点になった。研究代表者の小山泰・関西学院大教
授は、光合成を担うカロチノイド系の色素が効率よく電子を発生することを報告し
た。柳田祥三・大阪大学名誉教授は、電極で色素から発生した電子を効率よくとらえ
るうえで重要な半導体(二酸化チタン)の構造などを紹介した。
 増感色素型の変換効率は理論値では30%以上出せることになっているが、これま
でのこのような研究開発では最大でも7、8%。主流のシリコン半導体の太陽電池
(15−20%)とはかなりの差がある。
 小山教授は「何らかのブレイクスルー(突破口)がないと10%は超えられない」
と慎重だ。一方、柳田名誉教授は「電極に使う透明ガラスの質など改善すれば、数年
後には実用化できる」と楽観的だ。
 増感色素型については、既存の太陽電池メーカーも、次世代をにらんで水面下で研
究を進めている。しかし、半導体だけでなく、化学合成できる色素がかかわってくる
ということで化学メーカーなど他業種の参入も予想される。
 シリコン太陽電池の生産量では欧米を圧倒しているが、増感色素型でも日本独自の
技術としてブレークすることを期待したい。

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『 兵庫県立大、シリコンで人工格子−溶液中で簡単に自己組織化 』

2004/6/28,日刊工業新聞29頁

 兵庫県立大学物質理学研究科の佐藤井一助手らは、溶液中でシリコンナノ結晶の2
次元結晶格子を簡単に自己組織的に作ることに成功した。水溶液中に分散したシリコ
ンナノ結晶を疎水性に変えたうえで、有機溶媒を加えてできた疎水・親水性2液界面
に1分子層のシリコンナノ結晶格子を作り出せる。従来、シリコンによる人工格子作
製は困難だったが、新手法を使えば、太陽光のすべての波長域をカバーする安価で環
境負荷の軽い太陽電池などに結びつく。
 この手法はまず組成的にシリコンリッチな非晶質の酸化シリコンをアルゴンの不活
性ガス中で熱処理して、内部にシリコンナノ結晶を成長させた酸化シリコンのナノク
ラスターを作る。
 この粉末を水溶液に入れ、超音波を当ててよく分散させ、フッ酸溶液を滴下して酸
化シリコンクラスターを溶解し、内部のシリコンナノ結晶を水中に露出させる。シリ
コンナノ結晶の未結合手はフッ酸溶液中の水素原子と終端結合して、疎水性に変化す
る。
 これに有機溶媒のオクタノールを加えると、疎水性のシリコンナノ結晶は有機溶媒
層に移動し、分散する。その後2、3日間、放置すると、2液界面に自己集合的に格
子配列する仕組み。
 この自己集合機構については弱い結合であるファン・デル・ワールス力でナノ結晶
同士が近づき、疎水性効果で水溶液界面に2次元的に集合するとみている。
 形成された人工格子のシリコンナノ結晶の粒径は約7ナノ―11ナノメートル。粒
径の差にかかわらず標準偏差はほぼ15%で一定だった。各シリコンナノ結晶間の距
離は4ナノ―6ナノメートルで、6方晶構造に形成された。
 格子間隔の機構については静電的な反発か、有機分子、水分子からなるクラスター
の干渉などと推定しているが、まだ議論が必要という。ナノ結晶の粒径は出発原料と
熱処理温度などで決まり、今後、5ナノメートル以下に制御していくという。
 豊富に存在し、環境負荷も軽いシリコンで多様なバンドギャップを持つ人工格子が
できれば、太陽光のすべての可視域をカバーする太陽電池や発光素子も可能になる。

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