イオックス、京大教授保有の溶融塩電解技術で新素材開発へ
                  (2月19日付 日刊工業新聞21面)

 【東大阪】イオックス(大阪府東大阪市、中村克弘社長、06・6727・7047
)は、溶融塩電解技術を生かした超微細加工の新素材開発に乗り出す。京都大学大学院
エネルギー研究科の伊藤靖彦教授が保有する技術を活用する。産学連携の取り組みを通
じ、かつて東大阪市周辺地域で栄えたメッキ加工の基盤技術に新たな技術を融合して、
新産業創成を目指す。
イオックスは、03年11月に、地元メッキ業者の帝国イオン(東大阪市、中村孝司社
長)などが共同出資して、資本金1000万円で設立したベンチャー企業。チタンやタ
ングステンなどのナノ粉体をメッキ処理することで、高機能性材料など新たな材料開発
を目指す。「例えば、融点が3000度Cを超えるメッキ材料はロケット部品に応用で
きる」(中村社長)とみている。
伊藤教授が保有する溶融塩電解技術は、水溶液分解に代わり、食塩や塩化マグネシウム
を高温で溶かした液状塩の中で化学反応させる。新しい材料開発、太陽電池などのエネ
ルギー面
、ダイオキシン分解など環境面での用途が見込まれる。
すでに同社では、京都大学の伊藤教授研究室に研究員を派遣して開発に着手しており、
大手企業との共同研究も予定している。事業目標は、特許出願件数を今後1年以内に1
0件、5年で50件。売り上げは初年度1000万円、5年以内に10億円にまで引き
上げる。
同社では、「商品化を急ぎ、新たな技術を全国のメッキ業界に広めたい。地元では東大
阪ナノテク・バレーを形成したい」(同)としている。25日には東大阪市内で関係者
を招き、会社設立会を開く。


日本化学会、柳田祥三フォーラム開催、リーダーのための化学技術革新
                  (2月18日付 化学工業日報2面)

 リーダーのための化学技術革新“昨日、今日、明日”をテーマに「柳田祥三フォーラ
ム」が開講する。日本化学会の産学交流委員会が主催する技術開発フォーラムの一環。
企業の寮などに泊まり込み、一泊二日で自由な意見交換、自己研鑽を行うというもので
、今回は光触媒、半導体超微粒結晶、色素増感型太陽電池、マイクロ波応用技術など幅
広い領域で世界の研究リーダーである柳田祥三大阪大学教授を塾長に、化学の“技術革
新”論が展開されることになっている。
 柳田祥三フォーラムは技術革新の次世代を担う若手の人材を対象に開講するもので、
民間企業の研究開発トップを経験した独立行政法人・産業技術総合研究所の山辺正顕氏
が「フッ素化学技術の革新を体験して」、ポリオレフィン重合触媒研究で世界的に著名
な三井化学の柏典夫氏が「体験した高分子技術革新と海外戦略」のテーマで主力事業の
研究開発と事業戦略を披露するほか、資生堂の福井寛氏が「ナノマテリアルズのニーズ
とシーズ」、ダイセル化学工業の渡加祐三氏が「産学協同研究推進とリーダーの役割」
、元日本触媒の倉田直次氏が「技術革新における人間関係と資質」とそれぞれの経験を
話す。また塾長の柳田教授が「マイクロ波熱触媒」の化学技術革新の可能性を示す予定。
 講座は第1回が二月21〜22日に静岡県伊東市の日本ゼオン・碧荘で開講、第2回
は5〜6月に実施(場所は未定)する計画。参加費は2万円。定員三十人。問い合わせ
は日本化学会産学交流委員会「技術開発フォーラム」係まで。

インタビュー/東京農工大学教授・黒川浩助氏
                  (2月17日付 日刊工業新聞11面)

 世界の半分弱の市場と生産を持つ太陽光発電で、太陽電池メーカーが一斉に増産に向
かっている。世界は03年度74万キロワット程度に増強、今後も毎年10万〜20万
キロワットは伸長していく。世界をリードしていく日本の太陽電池事業の課題は、さら
にコストの大幅引き下げを目指した薄膜化などの技術開発だ。太陽電池開発の第一人者
、東京農工大学工学部教授の黒川浩助氏にこれからの太陽光発電の大幅普及への道を聞
いた。

―シャープが今秋に生産規模を30万キロワットに増強、京セラ、三洋電機、三菱電機
も倍増体制に入っています。

「日本企業は世界をリードしているが、今の状況は太陽光発電の世界的な普及からみれ
ばまだ長い工程での一里塚。2010年に国は482万キロワットへの普及を目指して
いるが、これが次の一里塚。本当に無視できないエネルギーとなるのは2020年以降
で、50年には50%が再生可能起源のエネとなるだろう」

―ドイツでは太陽光で大型の発電施設ができています。

「電力企業が、太陽電池での電気を高く買い上げている制度を充実させているため、ソ
ーラーパークも動き出している。ミュンヘン郊外には4000キロワットのソーラー発
電設備が03年5月から動いている。1000キロワットクラスは続々立地されていく
方向だ」

―一段の普及に向け、コストをさらに大きく下げていく開発と生産対応が求められます。

「事業用で1キロワット14〜15円での発電単価となれば飛躍する。このため量産技
術にプラス作り方の工夫と材料の取り換えも出てくる。日本では家庭用はオール電化で
、今の平均1戸建て3キロワットが今後は7キロ〜8キロワットに高まるだろう。電気
変換効率を高めていく技術開発は今後も大きな命題。これからは工場の屋根や休耕田な
どへも設置されるだろう」

―薄膜化は課題。

「今は結晶系で300マイクロメートルが一番薄いが、今後は50マイクロ〜100マ
イクロメートルがターゲットだ。薄膜化によって原料の供給面でも有利になる。でもこ
のような薄さになると、従来のモジュールは使えなくなる。生産技術も変わる。NED
Oプロジェクトなどで100マイクロメートル以下の薄膜での実用化開発をしていくこ
とが必要だ」

―結晶系以外は。

「アモルファスはハイブリッドへいく。CIS(化合物半導体)は作り方は楽で、いい
製品が出てきたが、3元コントロールが難しい。
色素増感型は2030年あたりに花開
くだろう


―太陽光発電は植林より二酸化炭素(CO2)抑制効果があるといわれる。

「3キロワット規模で森林3000平方メートルにあたる。3キロワット住宅は50%
の太陽電池建ぺい率で130平方メートルの用地となる。3000平方メートルはテニ
スコート6面分。植林より太陽光の方が効果的で、工場や発電所での緑地を太陽光に切
り替える方がCO2抑制効果は大だ」

【記者の目/技術必要性訴え】国のサンシャイン計画での太陽エネルギープロジェクト
に最初から関わり、今のレベルは本格的に普及が始まったばかりと一層の技術開発とコ
ストダウンを国、メーカーに訴える。国際エネルギー機関(IEA)が中国のゴビ砂漠
へ大規模な太陽電池を設置して大型発電をするプロジェクトに中心として参加、第2期
に入り、10万キロワットを1ユニットに10カ所へ造成、循環自立のシステムを提案
する。(編集委員・駒橋徐)

     

 

三洋電機、04年度内に世界第2位に、太陽電池生産能力
                  (2月17日付 化学工業日報11面)

 三洋電機は来年度中に太陽電池の生産能力を倍増超にアップし、世界2位の年産能力
133メガワット体制とすることを決めた。同電池製造の新拠点として年初に稼働した
貝塚工場(大阪府貝塚市)内に建屋を増設、同70メガワットのラインを導入する計画
で、今秋には完成し、来年初からの稼働を目指している。完成すれば生産能力で現在2
位の京セラを追い抜くことになる。
 増設の工費は生産設備を合わせて75億円で建屋の建築総合面積は約1万3千平方メ
ートル。貝塚工場の一期工事分の投資額は53億円、同面積は約1万1千平方メートル
で、今回の投資はこれを上回る規模になる。同社は結晶基板とアモルファスシリコン薄
膜を使ったハイブリッドタイプの電池の開発に成功しており、変換効率は研究レベルで
21.3%(100平方センチメートル超サイズ)という世界最高値を記録、量産でも
同19.5%を達成しているが、今回の新ラインの完成でこうした技術を投入した高発
電量の電池を、より低コストで供給できる体制が整うことになる。
 同社は1980年に同電池の量産を開始。昨年まで洲本工場(兵庫県洲本市)と島根
三洋工業(島根県木次町)を拠点に年産能力30メガワットで電池を生産し、鎮岩工場
(兵庫県加西市)でモジュール化を行ってきた。シェアは現在4位にとどまっており、
市場の拡大を受けて昨年末、2005年に同120メガワット規模に増産する計画を発
表、年初から同33メガワット規模の貝塚工場を稼働させ合わせて同63メガワット規
模で供給を行っている。今回の投資によって年末に明らかになった増産計画は1年程度
前倒しすることになる。太陽光発電システムの業界では同200メガワット体制を構築
したシャープの独走体制が定着。これに続く京セラも高変換効率のシステムを投入した
り電池の大幅な増産を打ち出すなどで各社のシェア争いが激化している。


ディスカバー三菱電機(2)風から光へ、中津川変身(ルポルタージュ)
                  (2月17日付 日経産業新聞24面)

 長野県飯田市。南アルプスを望む丘陵に三菱電機中津川製作所(岐阜県)の飯田工場
がある。 三菱電機が国内シェアで首位に立つ換気扇を30年間にわたって生産してき
た。地元特産のリンゴ畑に囲まれた同工場は今年、太陽電池の一大生産拠点となる。
 「2005年をメドに太陽電池で世界のトップ3入りを目指す」。昨年四月に中津川
製作所長に就任した梅村博之(52)はこう宣言する。梅村は入社以来エアコンの開発
・生産一筋。「霧ケ峰」の海外生産を強化し、エアコン事業を収益源に育てた功労者の
一人だ。
 飯田工場に太陽光発電システムのパネル生産棟を新設し、生産を始めたのは1998
年。人工衛星搭載の太陽電池は70年代から開発に取り組んだが、住宅向けではシャー
プや京セラなどの後塵(こうじん)を拝した。
 昨年夏、米ニューヨークからカナダにかけ大停電が発生。中国・上海でも工場への電
力供給が一時停止するなど世界各地で慢性的な電力不足が顕在化した。梅村が駐在して
いたタイでも無電化地区の供給プロジェクトが相次いで立ち上がる。
 「換気扇で得た利益を太陽光発電につぎ込む時期が来た」。需要予測を慎重に読んで
きた梅村は、太陽光発電の市場拡大を確信した。
 飯田工場の生産能力は昨年九月に35メガワットから50メガワットへ引き上げたば
かりだったが、一月から再び能力増強工事に踏み切った。六月までに33億円を投じて
90メガワットに引き上げ、さらに2005年春には130メガワットにする計画だ。
 後発のハンディを克服する自信はある。エネルギー変換効率の高さだ。太陽電池から
発生する直流電力を交流に変換する三菱製パワーコンディショナーの電力変換効率は9
4.5%で業界トップという。太陽光発電システム事業センター営業統括部長の上原幸
雄(48)は「太陽光発電専用に開発したパワー半導体を採用しているため、変換ロス
を最小限に抑制できる」と胸を張る。
 三菱電機は2003年春にDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメ
モリー)事業をエルピーダメモリに譲渡。システムLSI(大規模集積回路)事業など
を日立製作所と統合し、半導体市況の大きな波に業績が翻弄(ほんろう)される体質に
決別した。
 だが、電力を制御するパワー半導体など特殊な製品は三菱電機の中に残した。常務の
塚本克博(55)は「パワー半導体はエアコンなど家電製品だけでなく、新幹線やハイ
ブリッド自動車のモーターなど三菱電機の幅広い製品に使われている。付加価値を高め
る上で欠かせないキーデバイス」と“新生三菱電機”の半導体事業戦略を語る。
 疎開工場としてスタートした中津川製作所は戦後、工場閉鎖の危機に直面しながらプ
ラスチック羽根を採用した扇風機を開発。大ヒットを飛ばし「風の中津川」と呼ばれる
ようになった。
 第一次石油危機で業績が低迷した時も室内温度を変えずに換気ができる「ロスナイ」
をはじめ、社長の野間口有(63)が中央研究所時代に開発した空気を汚さないガス暖
房機「クリーンヒーター」などを世に送り出し、事業構造転換のきっかけを作り出した。
「風」から「光」へ。中津川の成否に三菱電機の浮上がかかっている。=敬称略(藤賀
三雄)


[新製品]NTTとNTT−AT、携帯機器用ソーラー電源
「ポケットエナジー」を商品化
                  (2月16日付 WebBCN Daily News)
http://www.computernews.com/DailyNews/2004/02/2004021605128FAC90F22020.htm

 NTT(和田紀夫社長)は2月13日、太陽電池を利用して携帯機器に電力を供給で
きる太陽電池入力型モバイル電源の試作品を完成、NTTアドバンステクノロジ(NT
T−AT、田崎公郎社長)がクリーンなモバイル電源「ポケットエナジー」として5月
から販売開始すると発表した。
 「ポケットエナジー」は、太陽光をエネルギー源として発電した電力を蓄積する太陽
電池入力型のモバイル電源。1台で携帯電話、PDA、デジタルカメラなど、さまざま
な携帯機器への給電が可能。すでに特定の機器のみに対応したソーラー充電器は市販さ
れているが、汎用タイプでは新製品が初めてとなる。
 太陽光で発電する発電ユニット部と本体部からなり、本体部は電力を蓄積する蓄電池
部と、蓄電池の電力を種々の電圧・電流に変換する電力変換部で構成されている。出力
電圧は、対応機器に合わせたケーブルを接続するだけで自動設定(約3〜8V、最大1
0Wまで)可能で、ノートPC(通常30〜50W)以外の主要なモバイル機器に適用
できる。
 本体部に内蔵している蓄電池は約5Whの容量をもち、携帯電話の内蔵電池約2個分
のエネルギーを手軽に持ち運べる。単三アルカリ乾電池換算で1000本分以上のエネ
ルギーが利用できるほか、従来方式では困難だった間接日照(晴れた日の北側窓面)な
どの条件でも蓄電を可能とした。
 なお、新技術として、(1)単セル太陽電池発電モジュールを実現した「極低電圧入
力昇圧技術」、(2)出力自動設定を可能にした「ソフトウェア制御コンバータ技術」
を開発した。
 同社では、今後も「総合プロデュース」活動を継続し、商用電源の利用が困難な遠隔
モニタリング装置などへの応用開拓を進めるとともに、昇圧回路モジュールの商品化も
検討していく。さらに、マイクロ燃料電池などの新たなクリーンエネルギー源などへの
応用も視野に入れ、ユビキタス社会の実現に向け、環境・エネルギーの側面から実用化
を目指していく考え。

詳しくは:
http://www.ntt-at.co.jp/news/2004/release06.html