『 高知工科大と住友重機など、酸化亜鉛の透明導電膜、1メートル四方で実現 』
2004/1/8,日経産業


【高知】高知工科大学マテリアルデザインセンター長の山本哲也教授と住友重機械工
業を中心とする産学官研究グループは、酸化亜鉛の透明導電膜を1メートル四方まで
大型化する製造技術を開発した。1メートル四方は液晶パネルや太陽電池向けの商品
化で目安になるサイズ。大型化の障害だった厚みの均一さや不純物などの課題を解決
する技術で、2年以内に製膜装置を商品化する計画だ。
 酸化亜鉛製の透明導電膜は現在主流のITO(スズを添加した酸化インジウム)製
に比べ、材料コストが半分以下で済む。膜厚は0.2マイクロ(マイクロは百万分の
一)メートル。厚みの誤差はプラスマイナス5%以内で、ドイツや米国などの他の研
究グループの半分以下という。可視光線の透過率は商品化基準の80%を上回る85
%。低いほど良い抵抗値は基準の50オーム以下(1平方センチメートル当たり)に
対して15オーム(同)。
 「イオンプレーティング」という手法で製膜する。高純度の亜鉛と酸素、微量のガ
リウムにプラズマを当てて昇華させ、基板上に積層させる。大型化のため、昇華材料
を入れる炉床とプラズマ発生装置を2台並べる。今回は炉床表面への塗布(コーティ
ング)や冷却により、炉床の物質が膜に混入するのを防ぎ、純度の向上に成功した。
 膜は幅0.03マイクロメートルの柱がびっしりと詰まった構造。山本教授は「電
子顕微鏡で見える柱に付着した不純物を一つ一つ解析して発生源が炉床であることを
突き止め、抑制する手法を考えた」としている。四月に米国サンディエゴで開かれる
薄膜技術学会の国際会議で成果を発表する。

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『 高知工科大、産学官連携事業化メド、透明導電膜、酸化亜鉛で大型化 』
2004/1/8,日経 地方経済面(四国)

 高知工科大学の産学官プロジェクトが実を結び始めた。同大マテリアルデザインセ
ンター長の山本哲也教授と住友重機械工業などは、酸化亜鉛の透明導電膜を、液晶パ
ネルや太陽電池向けの商品化の目安になる1メートル四方まで大型化する製造技術を
開発した。2年以内をメドに製膜装置を商品化する。実現すれば、同大の大型プロ
ジェクトの事業化第一号になる。
 山本教授らは(1)高純度の亜鉛と酸素、微量のガリウムにプラズマを当てて昇華
させ、基板上に積層させる(2)昇華材料を入れる炉床とプラズマ発生装置を2台並
べる(3)炉床のコーティング(塗布)や冷却により炉床をつくる物質の薄膜への混
入を防ぐ――など「イオンプレーティング」と呼ばれる手法を確立した。
 この結果、膜厚は0.2ミクロン(1ミクロンは百万分の一メートル)で、誤差は
プラスマイナス5%以内とドイツや米国などの他の研究グループの半分以下に縮小し
たという。可視光線の透過率は商品化基準の80%を上回る85%。低いほど良い抵
抗値は基準の50オーム以下(1平方センチメートル当たり)に対して15オーム
(同)に抑えた。
 現在の透明導電膜で主流のITO(スズを添加した酸化インジウム)は、主要材料
のインジウムが希少で、主産地が中国のため安定供給を懸念する声がある。一方、酸
化亜鉛は原料の入手が簡単で、材料コストがITOの半分以下で済む。
 山本教授と住友重機、四国経産局などは2001年から共同で開発に取り組んでい
た。同教授らは今年四月、米国サンディエゴで開かれる薄膜技術学会の国際会議で成
果を発表する。
 同大は産学官連携を主眼とする公設民営の大学で、次世代型携帯端末用のディスプ
レーや次世代ICカードシステムなどでも、大手企業、官公庁と共同で研究開発を進
めている。