評価方法 最終更新 2003/11/14 *作製の途中です 


目次
§1 初めに
§2 疑似太陽光源
§3 評価装置
 3.1 何を評価するのか?
 3.2 光量の測定
 3.3 セルの光起電力測定
 3.4 ソーラーシミュレータの精度チェック

§1 初めに
 日本規格協会では「ソーラシミュレータ」について“結晶系太陽電池用”と“アモルファス太陽電池用”の2種類に分けて規格化しており、JIS 目録として公開しています。同様に「出力測定方法」「光感度特性測定方法」等も規格化されていますが、色素増感太陽電池についてはまだ取り決め → 標準化がなされていません。

 特に分光感度を測定するような場合は評価方法の違いによる影響を大きく受けます。アモルファスシリコン系では AC モードでチョッピングされた光に対する電流の周波数応答を電圧の変えながらロックインアンプで検出して行うのが通常ですが、この時セル抵抗の影響が反映することが知られています。しかしながら色素増感太陽電池ではレスポンスが遅く、どのような周波数を選択するべきか評価方法がまだ確立していません。白色光バイアスをかけながら評価した時とそうでない時についても、どちらを基準にするべきかという問題もあります。

 測定の仕方のみならず疑似太陽光源についてもピンキリですが、どんなにうまく工夫を凝らしても疑似であることに変わりはなく、光源の種類や使用環境(フィルター等)の違いによって当然のことながらスペクトルも変わり、最終的にはエネルギー変換効率の算出にも影響を及ぼしますので、同じような作りのセルであっても研究者間で多少異なる値となることを考慮に入れておく必要があります。

 総じて、光源のスペクトル形状やら強度やら光の均一性やら電池特性のデータ採取における自動化の度合いに至るまで、どの程度で満足するかという意味で選択の幅が非常に広く、意外に敷居の高い部分であります。


§2 疑似太陽光源
 太陽電池のエネルギー変換効率は地上に到達した太陽光強度、即ち地域や季節・時間によって変わり、また太陽電池自身の波長毎の感度特性や設置傾斜角度などにも関係します。従って疑似太陽光源、ソーラーシミュレーターには如何にスペクトル形状が太陽光に近いかが求められます。各種光源のスペクトルを以下に示します。*日本分光さんのカタログより

 
 連続光であるという特徴を持つことから、特に企業・大学等の研究レベルではキセノンランプが使われることが多いようです。太陽スペクトルとの近似性を高めるためにエアマスフィルターを併用したりもします。しかしながらこれにも限界があり 800 nm 近辺から H2O に起因する吸収が出てくる上、キセノンの輝線が重なってしまい、多くのメーカーのソーラーシミュレーターのスペクトルを見てもこの範囲の近似性はあまり良くないようです。

Perkin Elmer 社

XL300ソーラーシミュレーター

コンパクトキセノンランプ

ORC社

キセノンランプ光源XL300

山下電装(株)

キセノン分光器用光源「MLHシリーズ」

キセノンファイバー光源「XFLシリーズ」

(株)東京インスツルメンツ

200〜500W Xe & Hg (Xe) 光源(ORIEL 社製)

ウシオ電機(株)

クセノンショートアークランプ

分光計器(株)

簡易疑似太陽光実験キット

ハイパーキセノンエキサイタ

浜松ホトニクス(株)

高安定キセノンランプ


 他にもまだまだまだ多数の光源、シミュレーターがあると思われます。どれも一長一短ですが、少なくとも 100 万円程度は覚悟モノです。色素〜に限らず、太陽電池の評価方法として通常 100 W/m2 の照射光、 A.M.(エア・マス)1.5 と称する光を基準にして、どれだけエネルギー変換出来るかを“効率”で表します。このような光強度を確保するためには、少なくとも 300 W 程度の光源は必要になるかと思います。

 研究の取り掛かりとして,理科の実習用に,あるいは電池の相対的な比較ができさえすれば良いといった具合に太陽光スペクトルに似せることにそれほど拘らないのであれば、日曜大工店で入手可能な数千円程度の投光器(ハロゲンランプ)でも十分代用が可能です。キセノン光のように 800 nm〜1,000 nm 付近の赤外領域におけるいびつな輝線がないため、かえって良いかもしれません。
 なお、ソーラーシミュレーターのスペクトルにはいくつか規格があり、通常は AM(エア・マス)1.5 が使われます。この AM の定義ですが、太陽光が大気を通過する距離を表します。大気圏外における太陽光の AM は 0 とし、 赤道直下での真上からくる太陽光を 1、その間の通過の角度を1/sinθ(θは仰角)で表します。 AM 1.5 は東京の年間を通じての値にほぼ等しくなります。宇宙での使用を想定した太陽電池の場合は AM 0 のスペクトルを持つソーラーシミュレーターで評価することになります。

§2.2 モノクロメータ
 略。後述する IPCE 測定に必要となります。


§3 評価装置
 3.1 何を評価するのか?
 セルの光電変換特性にはいくつかの種類がありますが、大別すると (1) エネルギー変換効率 (2) IPCE に分けられます。IPCE はある波長において電子へ変換された入射した光子数の割合を % で表したもので、照射する光の波長を連続的に変化させながらセルの起電力を測定したものです。同じ測定で単位を A/W で表した場合は分光感度特性と呼ばれ、IPCE が主に化学系の研究者が常用するのに対して分光感度は電気系の人達に好まれる傾向にあります。また色素自身の光電変換能については (3) 量子効率 というのがあります。吸収された光子1個に対して光励起で誘起される特定の過程が何回起こるか、または特定の状態や分子が何個生成するかを示す量で量子収率とも言います。波長に依存。それぞれ以下のように定義されます。

(1) エネルギー変換効率

     
エネルギー変換効率(η)=出力(W) /入射光エネルギー(W)

(2) IPCE

    
IPCE(φi×A)= 外部回路を流れる電子数(S-1)/色素に入射した光子数(S-1
           =1240 (ISC / λΦ)  λ :波長 (nm)、Φ:投射した光束 (W/cm2)

(3) 量子効率

    
量子効率(φ)= 外部回路を流れる電子数(S-1)/色素に吸収された光子数(S-1
           =6.24・1018・I/(A・Fi)


 3.2 光量の測定
 太陽電池の特性を評価する前に、照射した光強度を測定する必要があります。エネルギー変換効率を求める時は通常 100 mW/cm2 の光量を基準とし、これを単位として 1 Sun と呼んだりもします。用途に応じてライトメーター、パワーメーター、光度メーター、光量計、日射計などが使われます。日常の実験で一定の光強度を確認するだけでしたら数万円のカメラ用露光計でもまずまず十分な役割を果たします。なぜなら、数十万円のライトメーターを用いてもセンサーには必ず光感度領域があり、太陽光スペクトル全体に渡って光量を測定しているわけではないので、数値をそのまま信用するわけにはいかないからです。

 太陽光エネルギーを精確に評価するためには気象用の日射計(ピラノメータ, Pyranometer)を用います。熱量計(サーモパイロメータ)という呼び方もします。例を上げますと

石川産業株式会社

測光計及びアクセサリ

ヴァイサラ株式会社

英弘精機株式会社

日射/日照計

株式会社日本エレクトリック・インスルメント

日射/日照計

有限会社クリマテック

回転式直達・散乱日射計

Vaisala 社

QMS101 and QMS102 Pyranometers

LI-COR 社

放射光測定センサー

リーダー電子株式会社

CD/MD レーザーパワーメーター

株式会社オフィールジャパン

簡易パワーメーター

金門電気株式会社

レーザパワーメーター

伯東株式会社

光測定器およびディテクタ

メレスグリオ株式会社

パワーメータパワー/エネルギーメーター

ネオアーク株式会社

パワーメーター・ジュールメーター

株式会社第一科学

光パワーメーター

株式会社レーザーテクノロジー

サーモパイル表面吸収ヘッド

有限会社本多計測器サービス

光計測器・光デバイス試験校正システム


日射:地上表面に入射する太陽光放射のこと。短波放射とも言う。太陽から直接地表面に到達する日射を直達日射、大気中で塵やミスト・エアロゾル・雲などにより散乱されることによって地表面に到達する日射を散乱日射と言い、両者を合わせて全天日射、または単に日射とも言う。日射量を測定する気象観測用機器は日射/日照計(Pyranometer)と呼ばれ、日射量の変換方式により熱型・量子型・化学反応型などがある。一般には熱型が使用され、その単位は kW/m2、積算値は MJ/m2 で表される。

 3.3 セルの光起電力測定
 以上、これら全てのお膳立てが揃った上でようやく太陽電池の評価が可能となります。大別して以下の3種類有り。
 (1) I-V カーブトレーサ (2) ソースメータ (3) ポテンショスタット (続きはいつか後ほど)

 ソーラーシミュレーターと光起電力測定装置全てを一体化した評価システムというものもあります。ただし市販の I-Vチェッカーなどは測定レンジがシリコン太陽電池専用となっており、そのままでは対応できないことが多いので注意が必要です。一例として数千万円する評価システムですが次のようなものがあります。
 

CEP-2000 分光感度測定装置 分光計器(株)
(色素増感太陽電池評価対応タイプ)

波長範囲

300〜1200 nm

照射光量

0.5〜5 mW(分光感度測定時)

照射面積

10×10 mm


 これはスゴイと思ったのは、非常に綺麗な(均一な)平行光なため、多少試料の置き場が上下しても光照射強度が変わらないという点でした。無論、照射光強度は途中でモニターして出力側にフィードバックを掛けて制御しています。照射面積はカタログ値よりも少し余裕があり、見た目15×15 mm 程度の四角型でした。定エネルギー、定フォトン数いずれのモードでも測定が可能です。

 さすがにこのクラスになりますと測定データの信頼性として絶対値の正確さが問われますので、装置設計もかなりの気合いが入っています。評価の基準に用いた太陽電池も、スペースシャトルに載せて大気圏外で特性評価したものを使用したそうです。

装置外観図

標準太陽電池

試料室(側面)

制御パネル

モノクロメータ

測定風景

セルスタンド(例

説明風景


 この装置を用いて、各種装置パラメータを変えて色素増感太陽電池を測定した結果の1例を以下に示します。使用したセルは標準的な材料で構成した効率 2.6%、FF 0.57、電極面積 1 cm2 のものです。*基板抵抗が大きいため 5 mm 角なら 5% は出るものです

  


 シリコン系では数百 Hz のレンジに渡って変化がありませんが、色素増感型では 10 Hz でも大きな出力(JSC)の減少が確認され、半分程度になりました(2→1→4)。照射光強度の違いでは 0.25 mW×m-2 で 4.8 mA×m-2、2.5 mW×m-2 で 6.1 mA×m-2 とそれほど影響を受けないことが分かりました(3 vs 2)。白色光バイアスをかけて測定した場合は、そうでない時と比べてやや大きめの値が出ています(6 vs 1)。

 3.4 ソーラーシミュレータの精度チェック
 
ソーラーシミュレータの検定を行いました。2003.11.7

測定機 LS-100 (PDF 652KB)
二次基準 Si 太陽電池
測定風景
O-社スペクトル
測定終了

 百分は一見に如かずなので、まずはレポート見ていただきましょうか? (PDF 479KB)

■ 図1は Si 二次基準太陽電池で光量 100 mW/cm2 測定し、これだけを基準に光量を合
 わせた時のソーラーシミュレータ(今回新規購入)のスペクトル
■ 図2は波長を 400〜800 nm に限定し、スペクトル合致度と積算光量を最適化した時の

 ソーラーシミュレータのスペクトル(現在、この状態で使用中)
■ 図3はこれまで使用してきた Xe ランプ+カットフィルター HA-50 光源のスペクトル

 (光量、半分近く足りない!)
■ 図4はこれまで使用してきた Xe ランプ+カットフィルター光源で、光量を増やした時のスペクトル
 (シミュレータには及びませんが、まずまず値段分)

といった具合です。色素増感太陽電池のように光の波長の影響を受けやすいものの場合は、二次基準 Si 太陽
電池で光量のみを合わせるのではなく、可視光領域(400〜800 nm などで)でスペクトル合致度を優先させ
て光量を決めた方が、より精密な測定ができるのではないか?と言うのが趣旨でございます。なお、今回測定
に用いた LS-100 ですが、NIST 標準ランプで校正を行っております。どうです?御自分のシミュレータが気
になる方は、以下の蓑田様までお問い合わせ下さい。

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蓑田 光博(ミノダ ミツヒロ)
英弘精機株式会社 気象・環境機器事業部 営業部
\|/ 〒151-0073 東京都渋谷区笹塚2-1-6
─ ○ ─ TEL 03-5352-2911 , FAX 03-5352-2917
/|\ 携帯TEL 070-6436-2128(外出中でもOK)
e-Mail:minoda@eko.co.jp(外出中はNG)
Solar Radiation :mminoda@nifty.com(外出中でもOK)
& :mminoda@di.pdx.ne.jp(外出中でもOK)
Photovoltaic URL:http://www.eko.co.jp(リニューアル!!)
  気象データ配信サービス「Net気象台」開始!!
           詳しくは
http://www.net-eko.com まで
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