【色素太陽電池でプロペラを回す】
【色素増感太陽電池の理論効率について】
グレッツェルセルの限界(最高効率)を検討する。
これまで幾つかの解説を見ると、エネルギー変換効率の試算の仕方は「光吸収で
26% loss して」「フィルファクターが 0.9
として」、、、式の引き算ものの議論がほとんどのようですが、シリコン系の太陽電池の理論最大効率については非常に簡単に求めることができます。即ち、太陽エネルギーのスペクトル分布において、バンドギャップ以下の波長の光を全て取り込み、エネルギーに変換すると仮定して値を求めているようです(当たり前と言えば当たり前ですが)。
ものの本によりますと物質の吸収端エネルギーと太陽エネルギー変換効率の関係というのがありまして、Si
の場合はバンドギャップ Eg=1.35 eV(919 nm に相当)で一義的に 31%
ということになります。一見して長波長まで吸収できる物質(←太陽電池)ほど有利で効率も
100%
に近づくような気もしますが、逆に電圧のロスが大きくなるため、太陽光スペクトルとの兼ね合いにより
1.4 V 前後がベストになるという話です。
この理屈が Ru dye
を用いた色素増感太陽電池にも当てはまると仮定しますと、HOMO-LUMO
間のギャップが 1.6 eV なので先ほどの図より
28.4%
が最大効率ということになります。
色素電池の電圧ロスについてですが、色素の LUMO
準位(-0.8V)と酸化チタンの伝導帯準位(CV、-0.7eV)間に 0.1 eV
の落差 →
電圧損失がありますから、シリコン系のグラフより試算した値より(むしろ低い方に!)少しずれるとは思いますが、基本的には色素電池だから特に高い低いとかいう議論ではなく、バンド間遷移を利用した単純光励起型の太陽電池では最大でも理論効率
30%
前後で頭打ちということになります。無論、これは色素を1種類しか用いないことを前提にした場合の話です。
それでは吸収波長の異なる色素をカクテル(混合)したら良いではないか?という話になりますが、実際には混ぜれば混ぜるほど単純に効率が低下することがほとんどです。これは、色素同士で電子の授受(もしくは電子とホールの再結合)を起こしてしまうためと考えられます。
【チタニアの結晶構造について】
“二酸化チタン”“チタニア”などといろいろな呼ばれ方をする
TiO2
ですが、組成式は同じでも結晶構造の異なる
TiO2
がたくさんあります。専門用語で多形が存在すると言います。有名なのは“アナターゼ(Anatase)型”と“ルチル(Rutile)型”で、これら2種類は工業的に製造されています。次に良く知られているのが“ブルッカイト(Brookite)型”で、以上3者は天然に鉱物としても産出します。合成された
TiO2 としては、層状化合物
K2Ti4O9
を酸処理して得た
H2Ti4O9
を空気中 550℃, 1 h 加熱することで“(B)
型”の TiO2
が得られます。またルチル型の
TiO2
に高圧をかけると“スリランカイト(Slyrankite)型”、更に高い圧力で得られる“II
型”というものがあります。信憑性は低いもののルチル型
TiO2 に衝撃波を加えてできた
TiO2
というものも報告されており、結局
TiO2
は7種類も存在するのでした。
注:図中、青丸は酸素原子、赤丸はチタン原子を表しますが、イオン半径は構造が分かりやすく見えるように適当な大きさで表示しています。実際はもっと大きな球が隙間無くびっちりと詰まっています。
せっかくなので自己 PR →
内田 聡
他「ソルボサーマル反応による高活性光触媒の開発」色材 72(11),
680~689, 1999.
【TiO2
(B) の結晶構造について】
ちなみに (B) 型
の名前の由来は同じ結晶構造を持つバデライト(Baddeleyite)
VO2
(B)にならったものと推測されます。*訂正、ブロンズですね。TiO2
(B)の結晶構造を解いた論文報告は2つあり、1991 年に Banfield
(アリゾナ州立大) 、1992 年に Thomas P. Feist (ペンシルベニア大)
という研究者が異なる結果を発表しています。Banfield の結果は有名な
Pearson's
Handbook
の結晶構造データ集にも収録されていますが、このデータを用いて綺麗な配位多面体は描けません(たぶん間違いでしょう)。間違いと言えば、ICDD
Card 35-88 ですがβ-TiO2
と記載されています。報告者は先の Banfield ですが、これも正しくは
TiO2 (B) だと思われます。
【結晶構造の絵を描くには (1)】
普段、無機化合物の結晶構造の絵を描くには ATOMS
というソフトを愛用しています。開発は Shape
Software ですが、ヒューリンクスから日本語にローカラーズされたものが出ています。値段は
Win 版,Mac 版いずれも定価 \78,000!と、お安くないです(英語版は
US $395)。ver.5 になってから理論的な XRD
パターンを計算してくれるようになり、とっても便利です。オプションで
220 化合物のミネラルライブラリー集有(\30,000)。
対抗馬として CrystalDesigner
というのもあります。値段はほぼ同じ US $ 399
ですが、教育機関の学生・職員は US $ 249
のディスカウント価格で購入できます。機能は XRD
パターンの計算ができませんが、モデルをマウスで回して見る操作感はこちらの方が軽快です。また、作製した結晶モデルを
CIF 形式で出力できます(ATOMS は不可)。Mac
版のみ。デモソフトのダウンロード可。
【結晶構造の絵を描くには (2)】
結晶構造の絵を描くにはソフトもさることながら、“原子座標”を得る必要があります。一番単純な
TiO2 (Rutile) で見ると、Ti (0,
0, 0), O (0.305, 0.305, 0)
といった具合に各原子の座標を指定して初めて絵が描けます。他に必要な情報は“格子定数”と“空間群”ですが、これらは
XRD パターンを収録した ICDD Card を見れば直ぐに分かります。
XRD
パターンが知られている全ての化合物について原子座標が求められているわけではないので、有無の判別も含めて元になる文献探しは結構苦労するのですが、ある程度はオンラインでも公開されていたりします。科学技術振興事業団(JST)で
Factデータベースというのを支援していたのですが、例のハッカー騒ぎの頃にサーバを閉鎖してしまったようですね(残念)。金属の単純酸化物なら先に紹介した
Pearson's
Handbook という本に載っています
。他に鉱物名で収録されたアリゾナ大のデータベースというのもあります。ゆっくり探すならここでしょうか
. . .
【結晶構造を解くには】
こいつを解説するのは気合いがいるんだよなぁ . . .
っつうか、力不足 > 私
【結晶構造の違いが反応性に及ぼす影響について】
同じ組成式の TiO2
でも結晶構造が違うということは、当然ながらいろいろな性質も異なるということを意味します。光触媒の分野でよく引き合いに出される
rutile と anatase ですが、anatase
の方が活性が高いことが事実として知られています。光(紫外線)を照射して水を分解するような反応の場合、anatase
の伝導帯の位置が水素の発生電位よりも僅かに高い位置にあるのがその理由として定説になっていますが、この理屈では気体の
NOX 分解などでも anatase
の方が活性が高いことを説明できません。
これまで TiO2
の特異的な触媒活性は1次元的なバンドギャップの大きさと位置だけで議論されることが多かったわけですが、実際、触媒反応に及ぼす要因には多くのファクターが関わってきます。粒径、比表面積、かさ密度等の物質の種類に依存しない形態・幾何学的なものから、物質固有のバンド構造や表面電荷密度などの電子的な特性に至るまで様々です。
結晶構造の観点から両者を比べた場合、TiO6
八面体ユニットの繋がりは rutile
型が同一平面上に規則配列するのに対して、anatase
型はユニット同士が前後して隙が多いことが一目で分かります。
要するに anatase
型の方が結晶格子の並びがルーズで入り組んでおり、原子レベルにおける表面の
roughness
が大きいという違いが影響しているのではないかと考えられます。
注:上記の説明は一般的に認知されたものではありません。
【電子構造の違いが反応性に及ぼす影響について】
運良く?結晶構造が解けた次のステップとして、電子構造(バンド構造)を求めることができます。下の図は計算により求めた
TiO2
のフェルミレベル近傍の状態密度(DOS)を比較した結果です。状態(States)量の値は
O 2s のピーク強度が等しくなるように規格化して比べてあります。
明らかに anatase 型の方が伝導帯下端 (Ti 3d)
の密度、即ち軌道の重なりが多く、このため、光触媒として用いた場合には光励起により価電子帯上端
(O
2p)から発生した電子を効率的に受け止められる(→触媒活性が高い)だろうということが容易に想像されます。
では、湿式太陽電池に応用した場合はどのような違いが出てくるのか?と言えば、励起された色素のエネルギー順位における
TiO2 の DOS
が大きいほど効率的に電子を受け取れるということになります。図では大体
Ti 3d の近辺が相当します。
注:上記の説明は一般的に認知されたものではありません。
【電子構造を解くには】
俗に“バンド屋さん”と呼ばれる心強い専門家の皆様がいらっしゃるので、詳細はそちらを御覧下さい。無機材質研究所の小林一昭さん、電子技術総合研究所の長谷泉さん、川本徹さん、DV-Xα公式ホームページなどが役に立つと思います。この分野、日本人研究者が結構頑張っております。
実際に自分が解く場合は Cerius2
という UNIX マシンのソフト上から CASTEP
というモジュールを動かして計算しています。ソフトのお値段はインターフェースが
\150 万円、CASTEP モジュールが 1 CPU 当たり \850 万円(×6
ライセンス)しますが、教育機関にはアカデミックディスカウントが適用されて定価の半額!と大変お・安・くなっております。値段分だけあって、結晶の一部を置換したり格子が欠けたようなモデルやら、原子の占有率を変化させたり等なんでもござれで、パソコンのソフトでは決してマネのできない化合物のバンド計算をこなしてくれる優れものです。
結晶としての扱いはできませんが、DV-Xαプログラムは足立裕彦先生が書かれた「はじめての電子状態計算、三共出版、\2,500」という本を買うと巻末に
MS-DOS 用の CD-ROM
が付いてきますのでこれまた大変お得です。C2
との値段のギャップが何とも言えません。
CASTEP や DV-Xα
は経験パラメータを用いない、原子の数と座標のみのデータで計算が可能な第一原理に基づく密度汎関数法を用いている点が特徴ですが、これの対抗馬?として最近ノーベル賞をとったHoffmann
のグループの一員が作った拡張ヒュッケル法を用いた YAeHMOP
というプログラムがあります。一般に密度汎関数法では励起状態に相当する伝導帯の記述が不正確と言われており、半導体のバンドギャップなどは常に小さく見積もられてしまうという欠点(Gap
problem)が知られています。しかしながら
TiO2
などの簡単な化合物で両者の結果を比較してみると、TiO6
八面体が構成する伝導帯の DOS
は密度汎関数法で解いた方が教科書通り綺麗に 2:3
に分裂しており(↓)、かえってこちらの方が正確なのではないかと思ったりします。
【色素の構造について】
代表的なルテニウム色素
Ru(etcbpy)2(NCS)2(I%2CH3CN
を例に取り説明します。組成式中の etc
は (COOEt)2 または
(COOH)2
を表します。有機化学的に構造式を描くと
上記のように表され、Ru3+
イオンを2個のビピリジル錯体とチオシアンイオンが取り囲んだ6配位構造をとり、更にアセトニトリルが2分子溶媒和していることが分かります。
etc
の官能基部分には可視光吸収特性を向上させるためいろいろな工夫が凝らされており、多くの種類が存在します。どちらかと言うと高級?な色素ほど
etc
部分の炭素鎖が長くなる(→長波長の可視光吸収が可能になる)傾向にあり、溶媒和分子の方も同様に複雑なものが用いられたりします。
この色素は結晶構造解析が既になされており、文献(Shklover
et al., Chem. Mater., 9(2)
1997)に紹介されている格子パラメータを用いると正確な立体図を描くことができます。注:図中、水素原子は省略されています。
a [Å]
|
25.182
|
b [Å]
|
10.229
|
c [Å]
|
16.069
|
β[deg]
|
102.89
|
V [Å3]
|
4034.85
|
crystal system
|
monoclinic
|
space group
|
C2/c
|
【色素の占有面積について】
上記の色素
Ru(etcbpy)2(NCS)2(I%2CH3CN
を例に取り試算します。面積が最大となる b 軸方向の (0 1 0)
面に投影した場合、Ru は 4 原子で色素は 4
分子存在します。従って色素1分子当たりが占める投影面積は
2.5182×cos((π/180)×(102.89-90))×1.6069×(1/4) = 0.98
で、約 1 nm2(厚みは 1
nm)となります。ちなみに一般に市販されている色素 Ruthenium
535-bisTBA(分子量:1188.5 g/mol)などは etc =
(COOH)2
型で溶媒和部分が
2CH3CN
ではなく2N(Bu)4
に置き換わるため、多少(2~3
割程度?)これよりも大きな面積になるはずです。
【色素の吸着量について】
面積 1 cm2(=
1014 nm2
)の電極を考えた場合、吸着可能な色素量は
1014 /
6.0221×1023 =
1.66×10-10
(mol/cm2)
ナノチタニアを用いることで幾何面積に対して実効表面積が 1,000
倍に増えたと仮定すると、吸着可能な色素量は1,000 倍の
1.66×10-7
(mol/cm2)
色素の値段を 1 g 当たり \70,000 と仮定して最終的に 1
cm2 当たりの値段は
1188.5×(1.66×10-7)×70000
= 13.8
(\/cm2)
と試算されます。この計算では
(1)
色素分子が完全に下地のチタニアを被覆している
(2) 被覆している色素分子は理想的に全く隙間なく並んでいる
というかなり無理な仮定を置いていますので、実際には 1
cm2 当たり \2〜3
といった値に落ち着くと予想されます。
【チタニアの実効表面積について】
石原産業製のナノサイズチタニア(ST-01)を例に取ると、比表面積
300 m2/g, かさ密度 0.26 g/mL(=
0.26×106
g/m3)という値が公表されています。
(1) 面積 1
cm2(=10-4
m2)の電極に厚さ
1μm(=10-6
m)の
TiO2
膜を塗布したと仮定します。
(2) TiO2 膜の体積は
(10-4
)×(10-6 ) =
10-10
m3
(3) この体積中に含まれる TiO2
の重さは (0.26×106
)×10-10 =
0.26×10-4
g
(4) 従って実効表面積は
(0.26×10-4
)×300 =
7.8×10-3
m2
始めに仮定した電極面積は 1
cm2
なので、表面の粗さ係数(roughness
factor)は
(7.8×10-3)
/
(10-4
)
=
78、即ち実効面積は
78
倍に増えたということになります。フワフワした粉体のかさ密度をそのまま
TiO2
膜の密度としたのでかなり小さめの結果となっていますが、論文等で散見する「実効表面積が
1,000
倍に・・・」と言うのは、まずまず理想状態に近い値だと思われます。
ちなみに上記の計算で“かさ密度”にアナターゼの“理論密度”3.89
g/cm3
を使用すると表面粗さ係数は 1167
となります。これはナノサイズチタニア1粒1粒の表面積全てを維持したまま単結晶の密度で膜を形成しているというありえない仮定に基づいた結果になりますので、1167
という値が ST-01 を用いて厚さ 1μm
のチタニア膜を調製した時の表面の粗さの上限ということになるはずです(?)。要約すると
膜厚(μm)
|
Min.
表面粗さ係数(倍)
|
Max.
表面粗さ係数(倍)
|
0.1
|
7.8
|
116.7
|
1
|
78
|
1167
|
10
|
780
|
11670
|
単純に膜厚が厚いほど実効表面積は増えるというだけの話なんですが、、、
【電極に金属板ではなく酸化チタンが使われる理由?】
酸化チタンの役割は2つあり、1つは見かけの表面積を増やしていることが上げられます。ナノサイズの粒子を焼き固めてそれら粒子間の隙間を利用することで(厚みは
10 μm程度)、幾何面積に対して 1,000
倍程度の実効面積を稼いでおります。単純計算しますと、これだけで電流値が
1,000 倍になる勘定です。
もう一つは発生した電子とホールの再結合を防ぐ役割を果たしていると考えられ(←異論はありますが)、金属板等の導体上ですと折角発生した電子が同じく発生した正孔、あるいは電解質に消費されてしまい取り出せなくなると考えられます。
実践編
【導電性ガラスの種類について】
現在、市場で流通している透明導電膜 FTO と ITO
を付けたガラスには以下のような違いと特徴があります。
FTO
|
・電気抵抗値は高い(→ 劣る)、ITO の約 6 倍
・加熱による抵抗値の増加は小さい
・耐候性に優れる
・表面に微細な凸凹加工がされたものも有り
・主にシリコン太陽電池用に生産
|
ITO
|
・表面は平滑
・主に液晶ディスプレイ用に生産
|
FTO は ITO
に比べて電気抵抗値が大きく、またその分導電膜を厚くしなければならないため光の透過性が少し落ちるというデメリットがありますが、加熱による抵抗値の増加が小さいため色素〜太陽電池で好んで使われる傾向にあります。
【導電性ガラスの購入先について】
しかしながら FTO
ガラスはシリコン太陽電池用に生産されており、メーカーも限られているため入手は容易ではありません。また、最高値を狙うような色素〜太陽電池に使用するためには膜厚を大きくして電気抵抗値を小さくした特注品が必要となります。以下に取り扱いメーカーの例を示します。
(1)
旭硝子(株)透明導電ガラス基板(タイプU−TCO)
(2)
日本板硝子(株)透明導電膜付きガラス板硝子
(3)
セントラル硝子
最近、旭硝子のU膜は出資子会社のエイ・アイ特殊硝子「旭硝子ファブリテック株式会社」さんが引き継いで販売されることになったようです。本製品、入手も容易で大変重宝致しますが、元々色素増感太陽電池用に設計されたものではないため450℃を越えて加熱しますと基板のシート抵抗が大きく上昇するので注意が必要です。
商品名
|
A110U80(U膜)
|
シート抵抗
|
10Ω/□ 前後
|
透過率
|
82% 以上(C光源)
|
ヘイズ
|
10% 程度(C光源)
|
膜厚
|
8000〜10000Å
|
標準硝子サイズ
|
400×900 mm
|
ガラス厚
|
1.1, 1.8, 3.2, 4.0 mm
|
-------------------------------------
旭硝子ファブリテック株式会社
〒564-0062
大阪府吹田市垂水町3-25-12
Tel: 06-6378-2556
東大阪市長田西6丁目3番34号
Tel:06-6378-6630
Fax:06-6378-5850
担当 益山
-------------------------------------
↑2005.12.7 訂正
ITO
ガラスの場合、少量でしたらサンプル提供という形で直接ジオマテックさんから入手することも可能かと思いますので、下記の氏原様までお問い合わせ下さい。
-------------------------------------
ジオマテック株式会社
R&Dセンター長
氏原 彰
03-3759-9325
akira_ujihara@geomatec.co.jp
-------------------------------------
参考までに、理科の教材用で性能を問わないのでしたら中村理科機器さんでも
ITO ガラス板を扱っています。15 cm 角で 4500
円だそうです。かなり抵抗値が高いのであまりお勧めではないのですが、入手は容易です。
【導電性フィルムの購入先について】
導電性 PET
フィルムというものもあります。トービさんより低抵抗で光透過性の優れたもの(透明導電性フィルム「OTEC」
)が販売されておりますので、以下にお問い合わせ下さい。A4
カットシート、もしくは 80 cm
幅のロール状で提供されます。
-------------------------------------
株式会社トービ http://www.tobinet.co.jp/
〒171-0014
東京都豊島区池袋2丁目47番6号 第2恩田ビル2F
TEL 03-5951-3875
FAX 03-5951-3864
担当:柏木哲也 kashiwagi@tobinet.co.jp
-------------------------------------
困ったねぇ
もう一件。Peccell
社から、2005年11月より DSC
用のフィルム電極を販売開始します。
仕様は下記の通り。
■プラスチックDSC用 低抵抗透明導電フィルム
導電膜:
ITO(シート抵抗13Ω/□)
基材:
PEN(厚さ
200μm)
透過率:
約80%(550nm)
耐熱性: 160〜180℃
色素にやさしいUVカット機能(<390nm)
|
耐熱性・熱収縮率
(0.4%)・耐薬品性ともにPETフィルムより優れ、機械的に安定で良好な性能が得られます。販売するサイズは
200×270mm(準A4サイズ)。
お問い合わせは E-mail: eigyou@peccell.com、TEL:
045-974-5656 FAX: 045-974-565 までどうぞ。
【色素の購入先について】
(1)
色素増感太陽電池の材料は以下の会社より(オンラインで)取り寄せができます。
--------------------------
http://www.solaronix.ch/
--------------------------
導電性ガラス以外は全て手に入ります。色素に関しては自前で合成も可能ですが、原料試薬の値段と手間暇を考慮して購入した方がいいと判断しました(単価は高いですが、アルコールに薄めて使いますので少量で大丈夫です)。チタニアもペースト状になったものが送られてきますので、そのまま使うことができます。
この Solaronix SA 社は 97 年 11
月にオンライン上で公開されたばかりの会社ですが取引の対応は早く、web に表示されている品名と量を電子メールで注文したら1週間程度で請求書と共に日本へ発送してくれました。ただし、私の場合税関での手続きにやや手間取ったので参考までに経過を説明しますと、、、
98/5/7 電子メールで注文
98/5/8 返事が来る
98/5/15 現地発送
98/5/19 東京税関着
98/5/20 税関から通知(質問書?)を受け取る →
直ぐに返事を郵送
98/5/25 仙台中央郵便局着
98/5/28 受け取り
東京の税関へは購入品に関する資料、内容説明、使用目的等を任意のフォーマットで書いた書類を郵送したらそのまますんなりと仙台へ送り返してくれました。Solaronix
SA
社が発送する際に御丁寧にも小包の外側に見積書を見えるように添付してくれたのですが、“Chemicals”と書かれてあったのと、総額
$2,000
という比較的高い値段の割に箱が小さかったため、「怪しい」と思われたのかもしれません(なんせオウム事件でいろいろありましたから)。
更に消費税+関税が \18,000
ほど発生したお陰で仙台中央郵便局でも足止めされたのですが、最終的に委任経理金(←現金)で処理してもらいました。ただし、今回のように正式な段取りを踏むケースは希なようで?量が少ない等、税関が目に留めなかった(運がいい??)場合はそのまま手元に直送されるようです。
支払いは東京都港区赤坂1丁目11-30 CS
タワーのクレジットスイス銀行の口座に振り込みになります。口座番号は
0507-877106-31(Solaronix SA)、担当責任者は Mr. Roland Jaquier
でした。全て請求書に記載されていますので、請求書番号(Invoice
#)を書いて、通常の銀行振込と同じ手続きで支払えば OK
だと思います。
**************************************************
(2)
国内のメーカーでは匿名の方から掲示板に書き込みで小島化学薬品株式会社。を教えて頂きました。Ru
色素を自社で合成・販売されているそうです。価格は一律
13 万円/1
g というお話ですので、Soralonix SA
から取り寄せる手間暇を秤に掛けるとまずまずいい勝負かもしれません(こちらは
$1,000 / 1 g)。製品データシートによりますと
化学式
|
[Ru(dcbpy)2(NCS)2]・2H2O
(dcbpy = 2,2'-bipyridyl-4,4'-dicalboxylic
acid)
|
成分及び含有量
|
Ru として 11% 以上
|
CAS No.
|
64189-97-5
|
「当社では 1996
年 8 月より埼玉大学と共同で、この光電気化学太陽電池(Ru
有機錯体)の開発に着手し、高純度且つ高機能 Ru
錯体の合成に成功した。現在、官民併せて 9 研究機関(他引合い 3
社〕にサンプルを提供して評価していただいたところ,スイスの競合メーカー(この錯体を製造出来るメーカーは当社とこのメーカーの
2
社しかない)より効率が良いと評価されている。
近い将来太陽電池の市場規模は
1
兆円と見込まれるが、現在開発途止にある光電気化学太陽電池が市場で認識されて量産・工業化がなされた時、当社が色素増感剤のトップメーカーとして君臨出来る事を願って、今後も埼玉大学との共同開発に注力して行きたいと考えている。 (須藤本部長)」
お問い合わせは下記まで。
---------------------------------------
営業担当 蓑輪、仲田
TEL (042)-953-9231 FAX (042)-953-9237
---------------------------------------
(3) N3 dye
なら更にもう1社、岸本産業(株)。安いです。お問い合わせは以下へ。
-------------------------------------
岸本産業株式会社
第二営業本部 東京化学品部精密化学品課
主任 白川 TEL (03)-3663-0273
-------------------------------------
(4) 最も新興のベンチャー企業(お勧め!)ペクセル・テクノロジーズ
PECD03(N3色素):
価格 ¥81,900(税込)/g *1gから提供
PECD07(N719色素):価格 ¥92,400(税込)/g *1gから提供
--------------------------------------------------------
本社所在地:〒225-8502 横浜市青葉区鉄町1614(桐蔭横浜大学内)
代表電話:: 045-974-5656 FAX: 045-974-5657
お問い合わせ E-mail : eigyou@peccell.com
--------------------------------------------------------
なお、2002年12月より Ruthenium 色素、Ti - Nanoxide、DMPImI
他、Solaronix 社
の試薬はフルウチ化学株式会社さんでも全て取り扱うようになった模様。値段は別途見積...
*参考までに:授業等で大量に使いたい、N3 dye
には拘らないといった場合には「銅クロロフィリンナトリウム」でも良いと思います(*自分では試したことがありません)。N3と違って水溶性のため、溶媒に水が使えるのも利点です。綺麗な緑色をしています。25g
で 3,000 円。
【色素溶液の調製について】
色素溶液の調製に私は Solaronix SA 社の Ruthenium535-bis-TBA
なるものをそのまま(精製とかせずに)エタノールやアセトニトリル/t-BuOH
混合溶媒に溶かして使っています。手で振った程度では溶け残りができたりするので、軽く超音波処理しています。
濃度は特に根拠はありませんが
3×10-4
mol/L(かなり濃い溶液です)。分子量は 1188.5 g/mol
なので、この濃度で色素溶液 100 mL
を調製するのに必要な色素量はわずか 0.0356
g。
1 g の色素全量をそのままエタノール溶液にした場合は
2.8 Lもの量になります。
Table
色素(Ruthenium535-bis-TBA)溶液調製例
色素/g
|
エタノール/mL
|
0.0356573
|
100
|
0.0713147
|
200
|
0.0891431
|
250
|
0.1782858
|
500
|
0.3565736
|
1000
|
【DMPImI の入手について】
最近問い合わせの多い
DMPII ですが、入手は
Solaronix
社のHPを
見られたし。国内製品をお探しなら「四国化成」さんをどうぞ(試験販売中)。
【ナノサイズ
TiO2
の購入先について】
種々のメーカーから主に“光触媒用”と称して製品が売られています。値段は量にもよりますが
kg
当たり数千円程度でしょうか?小口の販売をしているところは少ないので、手っ取り早くはサンプルを取り寄せるのがいいかもしれません。
【TiO2
ペーストの調製について】
酸化チタンペーストの調製は酸化チタン原料から添加剤の種類、混合比に至るまで研究者によって異なり、重要なノウハウの1つとなっています。最大公約数的な手順を示すと
(1) 酸化チタン超微粒子(10-30
nm)を適量の蒸留水または酸性水溶液に懸濁させる。例:TiO2
30 wt%
(2)
増粘剤としてポリエチレングリコールを添加する。例:PEG
#20,000 40 wt% vs TiO2
(3) 最後に界面活性剤として Triton−X100
を微量添加してメノウ乳鉢で十分混練する
というものです。基本的に如何に粒子の凝集が抑制されたペーストを調製し、なおかつ加熱した時に厚膜で多孔質な膜を実現するかに焦点が置かれています。我々のレシピの一例を示します。→
recipe1
ペイントシェーカーで 6 h 以上振とう処理しています。
pH を十分低くした酸(塩酸、硝酸、酢酸等)溶液を添加することで
TiO2
粒子の界面電位を制御し、分散した懸濁液を作ることができます。また分散剤を添加する場合は加熱後に残留成分が残らない
Triton−X100
のような有機系の界面活性剤が望ましいのですが、入れすぎると泡立つ場合があるので脱泡処理が必要になることもあります。分散剤の一種とも言えますが、アセチルアセトンで代表される
TiO2
表面修飾試薬を併用したりもします。ポリエチレングリコールの添加はペーストの粘度を高め、厚膜を達成することだけでなく、加熱中に蒸散することで酸化チタン膜の多孔性を付与する、あるいは膜の導電性ガラス基板との付着強度を高めるといった効果が期待されます。
グレッツェルらの論文を注意して読むと“grinding”するという記述があります。これだけではどういう具合にすりつぶしたのか伺い知ることはできませんが、伝聞によりますとメノウ製の乳鉢で数時間ほど激しく混練しているという話もありますので、単に調合比が明らかになっただけでは完全なトレースができないという面もあることを十分認識しておく必要があります。
【TiO2
ペーストに酸を入れる理由】
配位状態によって多少変わりますが Ti のイオン半径が約 0.75
オングストローム、O の半径が 1.26 オングストロームですから、
TiO2
粒子の表面は圧倒的に酸素原子面の占める割合が優勢となります。肉まん(O)の隙間にゴルフボール(Ti)が埋まっているような感じ。従って、表面には酸素のダングリングボンドが片手を伸ばして待ちかまえており、表面電荷密度という観点からはややマイナスの状態を保っていると思われます。←結晶で考えると、電荷密度は当然、切り出し面で差が出てきます
ところで金属酸化物は水に懸濁させると必ず表面に電荷を帯びます。酸化チタンのナノ粒子の場合は
pH=5
前後でちょうど電荷がゼロの中性となります。即ち、上記の理由から水中のプロトン
H+ を吸い寄せて表面に取り込む性質があります。特に pH が 2
前後の時にこの性質が顕著です。試しに酸性の水溶液に酸化チタンのナノパウダーを入れてみてください。これだけで、何もせずとも
pH が 1〜2
程度上がるはずです。比表面積のあまり大きくない通常サイズの酸化チタン粒子ではこのようなことは起きません。
色素増感太陽電池で良好な特性を得るには、良く分散された酸化チタンペーストの調製が必須となります。この時ペーストに酸を加える理由は、等電点より更に
pH を低くして(H+
濃度を高くして)できるだけ表面を+状態にし、粒子同士が静電反発するように仕向けるためです。逆に酸を加えない等電点付近の
pH
では表面電荷が少ないため粒子間に働く分子間力の方が優り、凝集してしまいます。
【ナノサイズ
TiO2
ペーストの購入先について】
上記の通り、酸化チタン“粉末”を原料にしてペーストを作製するには適切な添加剤の選択や分量の検討、更には分散処理等が必要になってきます。この辺は善し悪しで、粉末系の場合は自分の好きな割合・調合で希望するペーストを調製できるという利点もあります。しかしながら試験研究的に最高値を狙うのでしたら水熱処理を施した単分散の酸化チタンコロイドの方が各種の性能面で優れています。
最近はこうした色素増感太陽電池向けに出来合のペーストが販売されていますので、利用するのも手かと思います。以下に例を挙げます。
メーカー
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型番
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特徴
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触媒化成工業(株)
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HPW-18NR
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水溶液系、低粘性
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HPW-400C
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水溶液系、低粘性
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PST-18NR
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有機溶剤系、高粘度・スクリーン印刷用
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PST-400C
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有機溶剤系、高粘度・スクリーン印刷用
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触媒化成工業株式会社 研究本部新規事業研究所 第一研究グループ
〒808-0027 北九州市若松区北湊町13-2
TEL:093-751-0285 FAX:093-751-9799
水野 隆喜 様 E-mail:mizuno-t@ccicj.com
【TiO2
ペーストの焼き付けについて】
焼き付ける温度が高いほど強い膜が得られるので(その代わり比表面積は減少しますが)? 通常はガラス基板が軟化しないギリギリの温度
500 ℃付近で 30 分とか 1 時間とか加熱します。
ただし、ナノサイズのチタニア超微粒子を使うことが必須になります。これに水を加えるだけで、とりあえずネットリしたペーストになります。粒子の大きなミクロンサイズのチタニア粒子では、このようなペーストを調製しても個液分離して綺麗に塗れません。また、焼き付け後も膜がポロポロと剥がれてしまいます。ナノチタニアの入手先は上記に示す通り。教育関係機関にはサンプルとして無償で提供して下さる場合があります。
工学部機械系湯上先生に教えていただいたのですが、1999
年 8 月 6, 7 日に仙台市科学館で一般向けに湿式電池の実演がされました。題して「リフレッシュ理科教室“光って何だろう” 第一回仙台教室」、主催はなんと(社)応用物理学会。
資料によりますと、ガスコンロで加熱した鉄板上にガラス基板を置いてチタニア膜を焼き付けたそうです。これでいくと設備のない場合にはテフロン加工された調理用フライパンでも代用できるような気がします。ちなみにテフロンの軟化点は
280 ℃。
【色素太陽電池でプロペラを回す】
学会や展示会で見掛けるプロペラ回しには、色素増感太陽電池専用の高性能モーターが使われているというトリック(?)があります。通常市販されている
Si
太陽電池モジュール用のモーターではなかなか動いてくれません。私の知る範囲で2つほど候補がありますので、それぞれ以下に示します。形式は更に細かい分類がありどれが最適なのかまでは分からないのですが、手元にあるのは
1016M の 012G というタイプです。動作時は 2 mA / 0.35V
程度の電気が流れています。006G
の方が良く回ったような記憶がありますが、微妙な差だと思います。最近、より起動トルクの小さい
0816P 008S
というのを入手して、なおかつプロペラも更に小型軽量化したものを用意したのですが、012G(写真左)の方が動作が機敏でした。(泣)モータースペックよりも個体差、回転軸の滑らかさの方が影響が大きいような気がします。細身なので台座がないと格好悪いのが難点です。展示会のように長時間高速度で回し続けると部品がすり減るためか、いずれモーターが壊れますので注意が必要です。
更にその後、1219N 015G
というのを入手しました。本シリーズの中では今のところこれが一番良さそうな気がします。(2003.4.5)
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品 名:DCマイクロモータ
会社名:光進電気工業株式会社
住 所:東京都目黒区自由が丘1丁目20番19号〒152-0035
TEL(03)3717-0101 FAX(03)3718-0101
価 格:1016M003G @5,700
1016M006G @5,800
1016M012G ?
0816P008S @5,200
1219N015G ?
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遂に見つけました!Solaronix
のデモセルに付いてくるのはこれです。(2007.9.25)
■Thin Profile DC-Micromotors (with
flat ironless rotor)
Series 2008K (003SRG or 006SRG or 012SRG)
http://www.faulhaber-group.com/uploadpk/EN_2008SRG_FTB.pdf
一方、Maxon
のモーターもよく学会等で見かけるのですがこちらも輸入ものですので、いい値段がします。お勧めは下。私の各種手持ちのモーターの中では一番回りが良いです。(2004.8.5)
■マクソンジャパン株式会社
http://www.maxonjapan.co.jp/
Tel: 03-3350-4261 Fax: 03-3350-4230
担当者:営業部 池野 雄一郎 or 金澤 武郎
モーター番号:2522.846-11.112-000
(予告無しに生産中止になる可能性あり)
価格(2008年3月現在):
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<大学・国家機関向け>
1−4台発注時: 8,320円 / 台
5−19台発注時: 6,640円 / 台
20−49台発注時: 4,960円 / 台
50−149台発注時: 4,770円 / 台
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<一般企業向け>
1−4台発注時: 10,400円 / 台
5−19台発注時: 8,300円 / 台
20−49台発注時: 6,200円 / 台
50−149台発注時: 5,300円 / 台
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*2009.3 価格改定
他、maxon
DC
motor(Amax-12 #265377)なども形が細長ですが良く回ります。
一応、国内でも探せば出てきます、ソーラーモーター。
値段も1桁安くて良さそうに見えますが、動作は未確認です。
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品 名:ソーラーテック・H151
商品番号:6607760
規 格:0.4V・無負荷時16mA/300rpm
価 格:700円
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動作を確認しているのはこれ。十分回ります。(2004.8.5)
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品 名:光電池専用モーター
会社名:マブチモーター株式会社
商品番号:P70-2654(太陽電池)RF-330TK
価 格:560円?
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