3B封止剤の使いこなしについて            2004/8/5(木)14:23 


 

 

 

 

 業界ではほぼ唯一?のスリーボンド(株)製、色素増感太陽電池専用の光硬化性樹脂ですが、
せっかくサンプルを手にしていながら
「固まらない」「素性がよく分からないので使っていない」
といったケースをたまに目にします。もったいない! 中には営業サイドが取扱に不慣れで、説明
不足だったという場合もあるかもしれません。ここでは実体験を交えて、使用上の注意点を挙げた
いと思います。

 その前に、、、未だに「良い封止剤無いですか?」問い合わせがあったりするわけですが、百分
は一件に如かずなので下記データ御参考下さい。しばらく前の半導体産業新聞セミナーで紹介され
ましたグラフです。当日はシール剤の一般的な分類から色素増感太陽電池に向けた設計指針、なら
びに各種耐久性のデータ等を御披露頂いたわけですが、下は耐久性に関連する結果のごく一部です。
熱可塑性樹脂とありますのは比較に用いたハ○ミ○ンであり、データが欠落しているのは単に測れ
なかったことを意味します。シール剤Aはスリーボンド製で、1000 h のオーダーで過酷ないじめ
試験においても経時変化がほとんど無いことを意味します。既にサンプル供給された各社、あるい
はグレッツェル研においても高い評価を得ております。

 *風雨に曝された、特に湿気のある環境下でアイオノマー樹脂が十分な接着強度を維持できない
ことは、この業界ではジョーシキとなっております。


 がしかし取扱いにクセが無いでもなく、うまく硬化しないという感想も一方であることは事実なの
で、いくつか使用上の注意点とノウハウを列挙致します


・液状です。
熱可塑性樹脂のようにシート状のものをハサミで切ってドライヤーでシュッという
手軽さはありませんが(おまけにベタつくし)、これは高い接着力と封止力の代償と思って諦め
てください。(笑) 工業生産用として塗布ロボットを使用することを想定していることも理由
の1つです。

・硬化後の手触りはブヨブヨしています。手に付いたり糸引きが無い限り、これが硬化の完了し
た状態になります。エポキシ系や瞬間接着剤等を見慣れた身からしますとかなり違和感あります
が、どんなデバイスも温度による熱膨張・たわみは必ず生じますので、こうした変形に追従でき
るよう意図的に柔軟性を持たせています。

・主として面と面の間で使用します。
ガラスの端部に肉盛りするような場合、シール剤が多すぎ
ると硬化しない場合がありますので御注意下さい。必要最小限の量でOKです。

・電解液はシール剤硬化後に入れます。
注液部を2カ所(あるいは1カ所)だけ残し、接着後に
電解液を入れます。電解液に触れた状態ですと、液の組成や種類によっては未硬化が発生するこ
とがあります。最後の孔を閉じるエンドシールはそのまま少量のシール剤を載せても構いません
が、より完璧を期するならば薄いガラス板で蓋をした上にシール剤を被せて硬化すれば完璧です。

・31X-088E(透明)と 31X-X100(不透明)には得手不得手があります。私が
使用している UV 照射器は非常に光量が低く、こうした条件下で 31X-088E
を肉盛りして使用すると硬化に失敗することがあります。31X-X100 はこの点
問題なし。しかしながらこちらにはナノフィラーが添加されており、硬化後の
色調はややくすんだ乳白色をしています。仕上がりも固い感じになります。
長く静置すると分離しますので、使用前によくかき混ぜて使います。
 右の UV 照射器には波長切り替え SW があるのですが、31X-X100 ではエネ
ルギーの強い 254 nm よりは 365 nm の方が硬化し易かったです。4 W のラ
ンプで15 分程度。
 *1 導電膜による光吸収が妨げにならないよう、意図的に 365 nm で感応
    するように設計してあるそうです
 *2 上で御紹介しました UV 照射器ですが、あくまでも簡易な必要最小限

    の装置ですので(時間かかりますし)、しっかり固めたい時にはも
    っと高出力の光源をお使い下さい。
 *3 31X-088E ですが、200W の Hg ランプをスポット照射した場合は肉
    盛りした状態でも 20 秒で硬化しました!

 

・硬化に失敗した時は、それ以上いくら光を強く・長く当てても硬化しません。これに関し
ては以下のような御回答を頂いております。

 >途中で硬化を中断した樹脂に再度光を照射しても樹脂の硬化は
 >進行しません。これはラジカル反応の特徴で、生長反応と停止反応は競争的に起こって
 >いるため、光照射を中断する→生長反応が中断するということから、停止反応が優先的
 >に進行し、反応性のある官能基が失活してしまいます。

・電解液に触れた状態でも硬化できる場合があります。意図的に 3-MPN を溶
媒としたヨウ素電解液の液滴中にシール剤 31X-088E を1滴垂らした状態で
200 W の UVスポット照射を試みました → しっかりと硬化してくれました。
すごいですね。

証拠写真
 

・面と面の接触を防ぐために(短絡防止)ギャップ調製材が入っています。液晶で使われる
シリカビーズと同じ物と思って頂いて結構です。粒径も 20〜30 nm を前後に多少のバリエ
ーションがありますので、「どうしてもこの厚みにしたい」という希望がある方は担当の方に
御相談下さい。逆にギャップ調製材の入っていないものもあります。

・はみ出たシール剤や汚れはトルエンでふき取りができます。

 参考までに、 2002/4/22(月)に不定期日記でも御紹介しましたシール剤の塗布・硬化試験の様子
を再掲致します。

自動制御によるシール剤塗布の様子
QuickTime ムービー(5.2 MB)
UV 照射機へ
QuickTime ムービー(1.4 MB)

 シール剤の評価項目は非常に多岐に渡り、また使用者の電解液あるいは基板との組み合わせもあり
ますので全ての封止性能を補償するものではありませんが、「今すぐ試してみたい」という要望には
お応えできるかと思います。そろそろ販売のアナウンスがある頃でしょうか?お問い合わせは下記、
中村様までどうぞ。

-----------------------------------------------------
 株式会社スリーボンド
 〒984-0011 仙台市若林区六丁の目西町 8-8
 TEL 022-287-2905 FAX 022-390-1092
 研究所研究企画課技術サービス 中村 恒義 t-nakamura@threebond.co.jp
-----------------------------------------------------

 あくまでも「お客様の仕様に合わせた開発品を提供する」というのが彼らのスタンスですので、最
寄りの営業担当者には率直にダメな時はダメ、と伝えていただければ次回の改良に繋がることと思い
ます。一応、会社側からは「くれぐれも過大な期待は寄せないよう注意して欲しい」と念押しされて
おります。(^^;)