大気中光電子分光測定


【2007.5.25 理研計器にて】 

 とある日の午後、無理をお願いして理研計器さんをお邪魔しました。名前が示す通り、
理化学研究所や RICOH などと関連した旧理研コンツェルンの流れをくむ企業です。
主業はガス検知器なのですが、1980年代に発明した計測技術を応用して大気中で測れ
る仕事関数・イオン化ポテンシャル(IP)測定装置を開発しました。くどいようですが
大気中で測れる分光測定装置です。このため、有機材料はもちろんのこと、な
んと
水溶液も測れてしまう!という優れものであります。凄いね〜

 IP 測定は古くから UPS を用いるのが一般常識だったのですが、通常1億円以上という

装置コストもさることながら、真空測定が基本となるため有機物に対しては無力でした。
このため、測定値の真偽はさておき、有機EL材料の開発現場においては本装置を用いた
値が事実上のスタンダードとして活用されております(*実際にはかなり良い一致を示し
ます)。装置説明と測定原理に関しては専用のページがありますので、そちらをご参照下
さい。本装置を用いた仕事関数データ集は、毎度おなじみのシーエムシーさんから出版さ
れており、昨年待望の第2版が出ました。

中島さん
試料ステージ
液体用・固体用試料台
計測画面
3-MPN 中の I- イオン
新開発 IR 色素
N719色素
仕様表

 前置きが長くなりましたが、今回の測定に当たって検討課題は AC-2 にするべきか?
それとも AC-3 にするべきか? でありました。主な
違いは測定レンジで、前者が 3.4〜6.2eV なのに対して後者は 7.0eV まで測定が可能。
その差、約 1,000 万円とシャレにならないのですが、結論から先に言いますと我々
AC-3 に決めました。はい。DSC を構成する部材を一通り試した中で、標準
品でしたら8割方 AC-2 で足りますが、電解液や開発色素のいくつかはレンジが足りず
測定できませんでした。計測時間は1サンプル5分程度と非常に高速で、ここで測定し
た値と UV-VIS で決めたバンドギャップの値を差し引けば、LUMO-HOMO 準位やあらゆ
る部材のエネルギーレベルのマッチングを数値化して比較することができます。この
分野にはなぜかまだ馴染みが薄いようですが(?)、うってつけの装置だと思います。

仕事関数・イオン化ポテンシャルの測定   
  http://www.ac-2.com/wf.htm

膜厚の測定(酸化膜、潤滑膜など)
  http://www.ac-2.com/thickns.htm


有機薄膜仕事関数データ集[第2版]
・監修:安達千波矢(九州大学)
    小山田崇人(千歳科学技術大学大学院)
    中島嘉之(理研計器(株))
・発行日:2006年3月
・価格:31,500円(本体30,000円+税5%)
・体裁:A4判,85ページ
・ISBNコード:ISBN 4-88231-545-9
 http://www.cmcbooks.co.jp/books/s0757.php 

  

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藤原 秀二
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